義経

NHK大河ドラマ義経」。滝沢秀明主演。第十一話。
面白過ぎる後白河院平幹二朗)。鹿ヶ谷謀議の露見で院の寵臣の美男子の善勝寺成親をはじめとする近臣たちが逮捕され、処刑されて、そうして孤立したのちも何とか入道相国(渡哲也)や北政所平時子松坂慶子)の機嫌を取りながら生きてゆこうとする院の姿がなかなか泣かせる。
そもそも成親の処遇をめぐっては平家内にも意見の対立があったが、入道相国の怒りが凄まじかった結果、備前国への配流と決したのだった。しかも成親の義弟にあたる小松内府重盛(勝村政信)が、平家一門に連なる者をも容赦なく処罰するのであれば治天の君をも容赦なく処罰すべきではないかと主張したことで、院もまた平家から睨まれる立場に陥ってしまった。最愛の美貌の寵臣を失った上に、当の寵臣が処罰されたのを理由にその寵臣の義弟に狙われたのでは、いくら何でも院も堪らないだろう。
それにしても、この物語における小松内府は恐ろしい。平知盛阿部寛)は、成親の助命では小松内府に賛同していたが、流石に院への厳罰の論には驚いていたし、もちろん平宗盛鶴見辰吾)は大反対だった。この物語の描く平家一門では彼が最も常識的なのだ。そして弟の平重衡細川茂樹)は恐れ戦いて沈黙するのみだった。
この恐ろしい事件が発生する前までは院と平家との関係は良好で、院の五十歳の賀に際しては平維盛賀集利樹)と平資盛小泉孝太郎)の駄目兄弟が麗しく青海波を舞っていた。この舞が今宵の第十一話における目玉の一つだったろうが、なるほど実に麗しかった。できれば賀集利樹「青海波」腸完全版DVDを出して欲しいとさえ思った。
源九郎義経滝沢秀明)の家来たちが面白いのは二週前から変わらない。喜三太(伊藤淳史)の健気な賢さが泣かせるが、武蔵坊弁慶松平健)の主君への愛欲の激しさも笑わせる。うつぼ(上戸彩)が都へ帰ると宣言したのを聞いたときの武蔵坊の喜びようが露骨だった。恋敵うつぼの退場に安心したのだろう。泣かせる。