義経

NHK大河ドラマ義経」。滝沢秀明主演。第十四話。
源三位頼政丹波哲郎)の挙兵に対し平知盛阿部寛)・平重衡細川茂樹)率いる軍勢が出動。いよいよ宇治川合戦、橋合戦か!と期待していたが、見事に裏切られた。橋の上で合戦を繰り広げることもないまま、知盛が頼政に向けて至近距離で矢を射て、頼政は負傷し、間もなく倒れてしまった。頼政の戦死を見届けて源仲綱光石研)は自害。こうして以仁王岡幸二郎)の乱は終結してしまった。
他方、令旨を奉じた右兵衛権佐源頼朝中井貴一)は北条政子財前直見)の助言を容れ、北条時政小林稔侍)の軍を従えて伊豆で挙兵。石橋山で大庭景親の大軍勢に敗退したが、のちに大の忠臣となる梶原景時中尾彬)との出会いがあった。石橋山における頼朝の敗走と云えば日本画の名作二点が知られている。川崎千虎「頼朝朽木隠れ」一幅(愛知県美術館蔵)と前田青邨「洞窟の頼朝」二曲屏風一隻(大倉集古館蔵)。今宵のドラマで描かれたのは「朽木隠れ」の場面だったが、雰囲気は「洞窟の頼朝」に近かった。そして次週いよいよ黄瀬河において頼朝と源九郎義経滝沢秀明)の兄弟が対面するが、日本画で云えば安田靫彦の傑作「黄瀬川陣」六曲屏風一双(東京国立近代美術館蔵)に描かれた名場面がドラマではどう描かれるのか、なかなか楽しみだ。
次週の富士川大勝はどのように描かれるだろうか。今宵の橋合戦を踏まえると少々不安にならざるを得ないが、ともあれ灯篭大臣平重盛勝村政信)嫡男の平維盛賀集利樹)が入道相国(渡哲也)より出陣を命じられた場面はよかった。この見た目だけ凛々しい男が水鳥の羽音に驚愕して敗走する姿を是非とも観照したいものだ。ちなみに富士川大勝を描いた日本画には竹内栖鳳(棲鳳)の初期の大幅がある。
義経が奥州を発つことの決意を表明したとき藤原秀衡高橋英樹)は最初は許そうとはしなかったが、そのときの一言「許さん!」の口調がまるで桃太郎侍のようだった。よかった。鳥羽殿に幽閉中の後白河院平幹二朗)と側近の丹後局夏木マリ)はどう見ても妖怪夫妻だった。素晴らしかった。それにしても平時子松坂慶子)主催の菊花宴で初めて姿を現した能子(後藤真希)は酷かった。こんなにも女房装束の似合わない顔があるだろうか。輔子(戸田菜穂)や経子(森口瑤子)に比べて差があり過ぎる。おかげで予告編に出た静御前石原さとみ)がとんでもなく美しく見えてしまったではないか。