汚れた舌

TBS系ドラマ「汚れた舌」。内館牧子作。第二話。
昨夜までに今期ドラマ諸作品が一通り出揃った。現時点で判断する限り今期最高傑作は横綱審議委員会委員内館牧子作のこの「汚れた舌」に落ち着く可能性が高い。物語も凄いが、演出も斬新というか尋常ではない。
とにかく登場人物の過半が異常な欲望や怨念を抱え込んでいて、しかもそれら多様な情念が今、徐々に互いに攻撃し合い始めたのだ。見るも恐ろしい光景であるのに何故か見ていて爆笑できてしまうのは、それが余りにも恐ろしいからだろうか。
涼野弘子(森口瑤子)と江田典子(松原智恵子)それぞれの狂気は際立っているが、最も異常な行動に出始めた涼野弘子の情念は、実は最も理路整然としたものでもある。最も理知的な人間が最も異常な行動に出ているのはドラマがまだ始まったばかりだからだろう。涼野弘子の今回繰り広げた復讐劇は恐らくは事件の発端でしかないだろう。
それに比べると江田典子の言動には論理性が見当たらない。それだからこそ恐ろしい。同じことは涼野弘子の報復の標的、涼野杏梨(牧瀬里穂)についても云えるだろう。この女の傲慢な言動は常に義母の涼野弘子を傷付け、そのことが涼野弘子の復讐劇を導き出してしまったわけだが、恐ろしいことに涼野杏梨は恐らくは己の邪悪さ加減に気付いていない。しかるに無邪気な罪こそは最も深い罪なのだ。
涼野弘子(森口瑤子)の実子の涼野光哉(田中圭)は、義兄の涼野耕平(加藤浩次)に対する敬愛混じりの敵対心の存在を、江田千夏(飯島直子)との会話中に表明したが、それは正直な思いの全貌であるのか、むしろ作戦を成功させるための半ば嘘の話で、裏面にもっと邪悪な心を潜ませてもいるのだろうか。今後の暴走にも期待してみたい。