瑠璃の島

日本テレビ系-土曜ドラマ瑠璃の島」。第二話。
藤沢瑠璃(成海璃子)の暴れようは今回も凄まじかったが、あれだけ荒れることの理由は理解できるし、共感できる面さえもある。なにしろ都会で生まれ育った少女が突然これまで何の縁もなかった沖縄の鳩海島へ連れて来られたのだ。都会の生活と田舎の生活との落差を知らない人々は、田舎の生活を徒に美化しがちで、そのような都会人の幻想に基づいたドラマの劣悪な作例が「みんな昔は子供だった」に他ならないが、実のところ田舎というのは少なくとも現代の日本の文明というものを知る者にとっては断じて快適な場所ではあり得ないはずだ。都会人があたかも空気のように当たり前のものと思い込んでいるものは、田舎には悉く存在しないのだ。極言するなら田舎とは文明人にとって生命の成立の極限状態に他ならない。古来、貴人の処罰が田舎への「流罪」の形を取るのは、実にそのような真理の的確な洞察に基づくと云えるだろう。
都会から島に移り住んだ斉藤茂(賀集利樹)と中嶋美月(井川遥)の二人組が鳩海島での生活の楽しさ、心地よさを力説したとき、藤沢瑠璃は、子どもの頃からこの島に住んでいればよかったと思うか?と質問し、両名は応え難そうな表情で、流石にそうは思わないと応えた。この問答は本質を抉り出している。田舎の生活に満足できる者とは、田舎しか知らない者でなければ、田舎を旅先としか思っていない者に過ぎないからだ。
第二話の主旨は、藤沢瑠璃を「娘」として迎えた鳩海島の民宿の主人、仲間勇造(緒方拳)と妻の仲間恵(倍賞美津子)それぞれの愛情の深さを明らかにしたところにある。仲間勇造の愛情の深さを藤沢瑠璃が知ったのは、藤沢瑠璃の壊した船の修理代を稼ぐため仲間勇造が石垣島の工事現場で密かに働いていたのを目撃したことによってだった。藤沢瑠璃がそれを目撃したのは仲間恵に連れられてのことだが、そもそも二人が石垣島に来たのは、藤沢瑠璃が腹痛を訴えたのを仲間恵が盲腸ではないかと疑ったからだ。病院のない島から病院のある都会的な島へ急ぐため、ヘリコプターを飛ばさなければならなかった。仲間恵が盲腸の恐れを抱くや大騒ぎを始めたのは、かつて盲腸で母を亡くしたからで、従って嘘つきの藤沢瑠璃がまた嘘を云っているのかもしれない可能性を考えるよりも、藤沢瑠璃が盲腸で亡くなってしまう可能性をこそ過剰にまで感じてしまったからだった。冷静な判断力を失ってしまう程に慌てたことが、親子の情愛に近い愛情の既に生まれていることを物語っている。