anego・アネゴ

日本テレビ系ドラマ「anego・アネゴ」。林真理子原作。中園ミホ脚本。制作協力オフィスクレッシェンド篠原涼子主演。第四話。
新入社員の黒沢明彦(赤西仁)は海辺の街での新入社員研修出張中に宿舎を抜け出して居酒屋に行き地元の漁師に怪我をさせてしまった。東済商事経営戦略部における彼の先輩、主人公「アネゴ」=野田奈央子(篠原涼子)は阪口部長(升毅)の命により、彼の不始末の処理のため奔走しなければならなかったが、その姿は被害者の漁師の眼には「馬鹿な弟」の面倒を見る確り者の姉そのものと映った。黒沢明彦は奈央子を「アネゴ」と呼んでいるが、実のところアネゴどころか本物の姉のように見えてしまったのだ。これは両名の「年の差」が見た目にも誤魔化しようがないことを物語る。その点、火曜夜十時放送「曲がり角の彼女」における大島千春(稲森いずみ)と甲本一樹(要潤)が思いのほか似合っているのとは対照的だ。
野田奈央子が見合いで知った相手、経済産業省の上級職、斉藤恭一(神保悟志)が奈央子とのデートを早めに切り上げ、握手だけをして去ったことは、奈央子を深く傷付けた。数ヵ月後には結婚するかもしれない相手とのデートが握手一つで終わったことが、不可解に思われたのだ。だが、ここにおいて奈央子は、斉藤恭一という相手が決して男としての色気のある人物ではないという既に分かり切っているはずの事実を見落としてしまっているようだ。見合いの席での会話によれば、この男は、将来の高級官僚として常に公務を第一に考え、出世のために多くを犠牲にし、楽しみといえば古典音楽の(CDではなく)レコードを鑑賞すること、甘いケーキを食うこと位しかないような、禁欲的な生活を過ごしているのだ。彼が折角のデートを早めに切り上げたのは翌朝からの海外出張を控えていたからで、むしろそんな慌しい夜なのに敢えて奈央子とのデートを希望した点こそが本質的なのではないか。でも、そんな冷静な判断は傍観者にしか無理なのかもしれない。当事者である奈央子は多分、あの夜かなり舞い上がっていた。初の見合い、結婚を前提にした交際。母親(由紀さおり)はその成功を祈っているが、周囲はその失敗を予想していて、ますます奈央子は意地になっていた。だから斉藤恭一の生真面目の行動に接して奈央子は徒に自信を喪失してしまった。斉藤恭一と早めに別れたあと、泥酔した勢いで黒沢明彦と一夜を過ごしてしまったのも、そうした追い詰められた状況の結果でしかなかったろう。
黒沢明彦と一夜を過ごして翌朝の、あの謎の女からの脅迫電話。これを機にドラマは日常から恐怖の非日常へ暗転するのだろうか。眼が離せない。
それにしても、黒沢明彦のあの新入社員研修は凄かった。一流企業の社員研修というのはどこでもあんな感じなのだろうか。自分には絶対に無理だと思った。あと、野田奈央子と斉藤恭一との見合いを世話した女性を演じたのは「トリック」で馴染みの大島蓉子だった。