エンジン

フジテレビ系「月九」ドラマ「エンジン」。木村拓哉=キムタク主演。井上由美子脚本。第六話。
養護施設「風の丘」の一員、樋田春海(戸田恵梨香)が、近所の貸ヴィデオ店で働く大学生の高橋トシヤ(斉藤誠)と交際していて、間もなく結婚する約束をしていることを皆の前で発表した。もちろん皆が驚いたし、「風の丘」園長の神崎猛(原田芳雄)や神崎ちひろ(松下由樹)、保育士の水越朋美(ハリウッド小雪)が不安を感じたのは云うまでもなく、もう一人の保育士、鳥居元一郎(堺雅人)が猛反対に回ったのも必然だった。そして神崎次郎(木村拓哉)以外の大人たちの誰もが予想した通り、この交際は直ぐに破局を迎えた。交際相手のトシヤは単に春海を繋ぎ止めておくだけのために「結婚」に同意したに過ぎない。その軽率な同意が相手にどれだけ重みを持つのかを全く考えもしなかったのだ。
この騒ぎも結局は、次郎が春海のために真剣に怒ったことが春海の哀しみを少しだけ和らげ癒したことで、一応の決着を見たかに見えた。無論これだけでも充分に一つの「ドラマ」として成立していたが、どうやらこれは次週の物語へ向けての助走でもあったらしい。今宵の第六話の最後、塩谷大輔(石田法嗣)が、密かに好意を抱いていた春海のために真剣に怒り、トシヤに暴力を振るったからだ。このことが次週、二つの騒ぎを惹起するだろうことは見易い。一つは無論、大輔と彼の両親(嶋田久作朝加真由美)との間の確執の激化。もう一つは、先週の第五話において園部徹(有岡大貴)・園部葵(佐藤未来)兄妹の秘密をめぐり周辺の市民連中が繰り広げた「風の丘」に対する抗議行動のさらなる拡大。事態は予想以上に複合化しつつある。
なお、こうした悲劇的な展開の中にも笑いがあった。「風の丘」の小さな子どもたちが「次郎!次郎!」と呼び捨てで次郎に呼びかけるのに対して、次郎が「たまには“殿”とか付けろ!」と言い返したところ、子どもたちは云われるままに「次郎殿!次郎殿!」と声をかけ続けたのだ。