内館牧子の汚れた舌

TBS系ドラマ「汚れた舌」。内館牧子作。第八話。
予想外の悲劇的な展開。江田典子(松原智恵子)が突然の発作で逝去したのだ。この突然の死をめぐる周囲の人々の反応は様々だが、中で最も複雑な姿を顕したのは涼野弘子(森口瑤子)だと云えるだろう。身近な人に不幸があったとき一体どのように振る舞えばよいのか?ということを冷静に判断し的確に行動できたのは他の誰でもなく弘子だったが、同時に、典子と白川隆一郎(藤竜也)との間にどんな過去があったのかを知ることで典子がどれだけ悔しく悲しく寂しい思いをしてきたかを最も深く理解できたのも弘子だった。典子の夫を自害に至らせた白川の軽く放った一言の、重く鋭い攻撃性を、弘子は自分に対して涼野杏梨(牧瀬里穂)の軽く放った無邪気な一言の冷たさと重ね合わせることで深く理解できたのだ。
ところで、「みっちゃん」=涼野光哉(田中圭)の人物像については先週ここに「思いのほか裏のない男子」と解釈して書いた。だが、恐らく正確には「表しかなく平板」とでも表現すべきだったろうか。光哉は杏梨に対して概ね好意的だが、常に好意的であるわけではない。光哉の好意的な態度に気付いて杏梨は彼を自分の味方と認識したが、光哉は必ずしも全面的には杏梨の味方ではないようだし、杏梨の好意を得るよりは杏梨から十万円の報酬を得ることに喜びを感じるようなのだ。