義経

NHK大河ドラマ義経」。滝沢秀明主演。第二十四話。
このところ姿を見なかった“池大納言”正三位中納言平頼盛三浦浩一)は鎌倉へ下向する途上、梶原源太景季(小栗旬)に伴われて源九郎義経滝沢秀明)の陣に来訪した。京における木曽冠者=源義仲小澤征悦)の乱暴について伝え、また義経の書状を携えて鎌倉へ出立した。池大納言頼盛のような京都の貴族たちが続々と鎌倉に下向し各種の伝達を担ったことが、将来の「幕府」の基盤を成したわけなのだろう。
それにしても面白過ぎる妖怪夫妻。治天の君後白河院平幹二朗)と寵臣の丹後局高階栄子(夏木マリ)。院と局の今宵の出番は全て面白かったが、ことに凄かったのが、(1)木曽義仲小澤征悦)が院庁の法住寺殿に侵入して院を連れ出そうとしたときの、柱の陰に隠れて怯えていた院と庇っていた局、そして(2)木曽義仲の軍勢が法住寺殿を襲撃して火をかけたときの土下座して謝る院と局の姿であるのは云うまでもない。しかも土下座して謝って命乞いをした挙句に幽閉された院と局も、幽閉先で落ち着きを得た途端に強気になり、やがては鎌倉軍が上洛して木曽冠者を撃退するだろうことを予測して面白がっていたのだ。如何わしい新宮十郎=源行家大杉漣)を煽っているときの遣り取りも実に不気味だった。変幻自在の妖怪夫妻と云わなければならない。他方、もう一人の妖怪、鉄漿の「鼓判官平知康草刈正雄)も決して負けてはいなかった。院の使者として木曽冠者義仲の陣を訪ねた際、「鼓判官」という愛称のことをネタにされて笑いものにされたときの、無言の無表情の中での怒りの様子が恐ろしかった。鉄漿は伊達ではなかった。残念なのは有名な「猫間中納言」がどうやら登場しないらしいことか。
西国に逃れた平家の陣は思いのほか華やかだった。旗ばかりか幕も赤色に染められていたからだろう。源行家との合戦に勝利して帰ってきた従二位権中納言平知盛阿部寛)と従三位左近衛権中将平重衡細川茂樹)はもちろん甲冑姿のままだったが、従一位内大臣平宗盛鶴見辰吾)も総大将に相応しく甲冑を着用していて、流石に今が有事であることを物語ってはいた。とはいえ安徳院(市川男寅)を守る建礼門院中越典子)も重衡室の大納言典侍輔子(戸田菜穂)も幼い主上のために禁中らしい典雅と厳粛を保とうとしているようで、そうした中で新中納言知盛と本三位中将重衡の戦勝の報告を受けて従二位尼平時子准后(松坂慶子)も漸く強気になってきたようだった。亡き入道大相国の「夢の都」を再興しよう!と宣言するに至った。
院から「三種の神器を返せ!」との書状を受け取ったとき内大臣宗盛がその書状を丸めて食って処分していて、そこにおいて彼は敬愛する院に裏切られた悔しさ、怒りに燃えていたに相違ないが、しかるに間もなく彼は再び院に騙され、裏切られることになるはずだ。そう思うと、あの手紙を食って消そうとする姿には一見して笑えて、やがて悲しくもなってくるのだ。