キムタク月九エンジン最終回

フジテレビ系「月九」ドラマ「エンジン」。木村拓哉=キムタク主演。井上由美子脚本。第十一話=最終回。
前半四十分間は最高に楽しかった。先週までの十話を通して蓄積された詩的な力が一気に爆発的に解放されたかのようで、見ていて本当に気分がよかった。それなのに!直後のあの急展開は何だろうか?無理あり過ぎではないのか?何故あんな無理をしてまで残念な結果に終わらせなければならなかったのか?必然性が一つも感じられなかった。もっと素直に幸福に終結しても何ら問題なかったのではないかと思う。と云うか、そうとしか思えない。キムタクには勝利こそが相応しいのに。
ともあれ、面白い要素も少なくはなかった。例えば、園部徹(有岡大貴)と園部葵(佐藤未来)の兄妹。神崎次郎(木村拓哉)の雄姿を見るためレースの会場へ向かおうとするものの、電車賃をどう捻出しようか兄の徹が悩んでいたところ妹の葵が満杯の貯金箱を差し出した。数年間に渡り地道に貯金してきたのだ。それで移動しようとしたが、残念なことに足りなかった。それで兄が諦めて帰ろうとしたとき妹は抵抗し、通りがかったトラックに向かってヒッチハイクの身振りをしてみれば驚いたことにトラックは停まった。偶々その運転手が親切だったのだろうが、葵の強運と魔性の賜物でもあるだろう。次郎の云う通り将来「いい女」になるに相違ない。他の子どもたちも、愛らしかった金村俊太(小室優太)を筆頭に、塩谷大輔(石田法嗣)や二宮ユキエ(夏帆)等それぞれ面白かったが、見所が最も多かったのはむしろ保育士の「元にい」=鳥居元一郎(堺雅人)だと云えるだろう。特に最後の夕食会の場面、この男は次郎の真似をして目玉焼きの一気食いをやっていたのだ。わずかばかりの柔軟性を備えた堅苦しい男というのは一旦ハジケると逆に異様に楽しい本性を発揮し始めるものなのだ。鳥居元一郎役に堺雅人を起用したのは大成功だった。伊吹テツヤ(石垣佑磨)も、菅原比呂人(青木伸輔)勢との乱闘騒ぎも含め元気で面白かった。九時五十五分頃の時点、次郎=キムタクのホリ風「ちょ待て!待て!」を聴くことができたのも今宵の見所だった。
ところで、金村俊太を引き取った「優しい里親夫婦」とは五月九日放送の第四話に登場した例の歯科医師の竹原夫妻(瀬戸陽一朗・山下容莉枝)だろうか。竹原医師を演じていた瀬戸陽一朗が仲間由紀恵阿部寛主演・堤幸彦監督「トリック」における山田奈緒子ファンの照喜名保の役者であることについてはそのとき既に書いた通り。