世界の中心で、愛をさけぶ

映画「世界の中心で、愛をさけぶ」。片山恭一原作。行定勲坂元裕二脚本。行定勲監督。2004年作。夜八時から三時間TBS系で放映。
昨年夏にはTBSがこれを堤幸彦監督、オフィスクレッシェンド制作協力によりテレヴィドラマに作り、三ヶ月間「金曜ドラマ」として放送したが、そこにおける朔太郎と亜紀と比較すると、映画における朔太郎と亜紀は殆ど別の人物像であると思い知る。テレヴィドラマにおける朔太郎(山田孝之)が鈍い中に芯の通った内省的な少年だったのに対し、映画における朔太郎(森山未來)は元気で調子よくて愛らしくて、まさしく少年像の一つの範例でさえあり得る。映画における亜紀(長澤まさみ)が詩人のような少女であるのに対し、テレヴィドラマにおける亜紀(綾瀬はるか)は高校生とは思えない程に慈悲深く、殆ど菩薩のようでさえあった。役者の個性の違いに因るところ最も多大ではあるだろうが、また監督の制作の意図の違いに因るのも確かだろう。それは作品中の恋愛のどこに重点を置くかの違いでもあるだろう。堤幸彦監督は朔太郎にとって忘れることのできない永遠の女性を描くことに傾いたが、行定勲監督は病床の亜紀の心を支え続けた永遠の少年を描くことに傾いたと云ってよいのではないだろうか。

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