仮面ライダー響鬼36巻

テレビ朝日系“スーパーヒーロータイム”ドラマ「仮面ライダー響鬼」。細川茂樹主演。三十六之巻「飢える朱鬼」。
またしても桐矢嫌悪者が大騒ぎをして口汚く罵倒していそうな展開。なにしろ今回の前半、桐矢京介(D-BOYS中村優一)は「少年」=安達明日夢栩原楽人)とイブキ門人の天美あきら(秋山奈々)を二人まとめて斬り捨てたのだ。とはいえ桐矢の攻撃的で冷酷な推論の言は実際には鋭く真実を突いてもいた。天美あきら自身がそれを最もよく自覚していた。かねてから悩んでもいたらしい。桐矢少年は明日夢の問題に続いて天美あきら固有の問題をも抉り出したのだ。
これに関連して注目したいのは、鬼としての仕事の都合で何時も学校を休んでいる天美あきらのため明日夢が作成しているノートを一瞥した桐矢がその内容の不備を瞬時に見抜いて指摘した点だ。明日夢がやっていることは行為の性格それ自体に関しては賞賛されるに値し得る。でも内容に不備があっては意味がない。その心は、間違えた方向で一致団結して頑張っても意味がないということに他ならない。熱くなって勢いに任せるのではなく、己の行為が正しくあるかどうか冷静に省みる必要があるはずだ。ヒビキ(細川茂樹)の何時もの静けさがそれを物語るし、敵への私怨・復讐心など必要ないという威吹鬼=イブキ(渋江譲二)の説諭もそれに呼応するだろう。身体を「鍛える」場合を考えると分かり易い。間違えたフォームで頑張っても筋肉を痛めたり骨折したりして体を壊しかねない。正しく「鍛える」ことが大切なのだ。
同時に、鬼の宗家の御曹司として何一つ迷う余地なく生きてこなければならなかった優等生のイブキにとって門人の天美あきらの苦悩が身近な問題ではなかったのは容易に首肯できる話だ。彼は弟子の苦悩を頭では理解できても経験において実感できてはいないのだと思われる。そして卓絶した鬼と苦悩する人間との間を媒介し通訳し得るのが、あのトドロキ(川口真五)の師である人生経験豊富のザンキ松田賢二)だけであるところも面白い。数多くの恋愛に鬼のように苦悩してきたと云うザンキ先生の今後の教育には多大に期待したい。