危険なアネキ

フジテレビ月九ドラマ「危険なアネキ」。金子茂樹等脚本。久保田哲史演出。フジテレビドラマ制作センター制作。伊東美咲森山未來主演。第三話。
大学病院という大組織(白い巨塔!)の意思決定を覆そうとする話がこの物語に馴染み易い題材だったかどうか。無理があったのは間違いない。会議室への皆川寛子(伊東美咲)の乱入があったからこそ武田育夫医師(高嶋政伸)が辞任覚悟で北村さおり(釈由美子)弁護論を展開し、武田医師の論が他の幹部連を動揺させたからこそ田村伸一教授(児玉清)も大岡裁きをやり易かったという理屈は理解できるが、その過程で窓の下の群衆を出したのは今回のその理屈に限れば必要な要素だったとしても、ドラマ全体にとってはむしろ致命的ではなかったろうか。「アネキ」皆川寛子の行動が徒に計画的・政治的なものに見えてしまい、「天然」の魅力で人々を魅了する女という設定に傷を付けてしまいかねない。多分あの群衆の出現を演出したのはアネキではなく田村教授の娘、田村愛(榮倉奈々)なのだろうが、無論そのあたりの説明はドラマ上に一切なかった。
皆川勇太郎(森山未來)のライヴァル中村拓未(平岡祐太)の人物像も深刻に傷付いた。彼の残酷な所業がどのような意図によるものであるかの説明は最後に簡単に呈示された。北村さおりに片想いだったからこそ北村さおりを不幸に陥れるような行動に走ってしまったらしい。己の行動がどれだけ深刻な事態に発展するかも想像できないで、好きな子に意地悪をしてやりたいという小学生並みの原理で行動したのだ。富裕な開業医の令息であるから世間を知らなかったわけだろうが、そうした理屈だけで納得するには少々不快に過ぎる話だった。要するに「危険なアネキ」物語の成分は殆ど理屈だけであって、そこには情念が乏しい。