大奥華の乱スペシャル

フジテレビ金曜エンタテイメント特別企画「大奥・華の乱スペシャル」。浅野妙子脚本。林徹演出。フジテレビ&東映制作。内山理名主演。
三ヶ月間、全十話にわたり放送された「大奥・華の乱」の物語をさらに過去にまで遡り、悲劇の連鎖の隠れた真実を明らかにした。音羽余貴美子)の昔語により一連の不幸の意味を知った牧野安子(内山理名)は、将軍徳川綱吉谷原章介)ばかりか御台所鷹司信子(藤原紀香)も伝の方(小池栄子)も柳沢吉保北村一輝)も、さらには桂昌院江波杏子)さえも本当は決して悪い人間ではなかったに相違ないとの結論を得ていた。理屈ではそうなのかもしれない。でも印象としては結局は逆に、全員が悪い人間だったようにしか思えない。この「大奥」ドラマには非常に中途半端なところがあり、一方で史上の人物を徒に醜悪に描くかと思えば他方では全てを時代の所為にして正当化してしまっている。だが、時代の制約、限界ということを持ち出すのであれば時代を確りと描き出す必要がありはしないか。例えば、このドラマにおける将軍には自由な行動が許されているようだが、もちろん史実ではあり得ない。権力者に横暴を許すのは現代大衆民主政治の特徴でこそあれ、封建時代の儒学による支配はそれを許さないことだろう。時代の限界が不幸の連鎖を生じていると語りながらも当の時代そのものを一向に描こうとはしないところに「大奥ドラマ」の限界がある。むしろ時代のことなんか無視を決め込んで只管「ドロドロの昼ドラマ」路線を邁進しておけばよかったのだ。