女王の教室スペシャル第一夜

日本テレビ系ドラマスペシャル「女王の教室・エピソード1-堕天使-」。遊川和彦脚本。岩本仁志演出。池頼広音楽。制作協力=日活撮影所。天海祐希主演。夜九時からの二時間番組。
[主な登場人物&出演者]阿久津真矢(天海祐希)●富塚保彦(生瀬勝久)・池内美栄子(三浦理恵子)・池内愛(17歳時=戸田恵梨香)●神田和美志田未来)●池内愛(12歳時=後藤果萌)・富塚翔(武井証)●真矢の母(江波杏子)●教頭(金田明夫)●真矢の父(西岡徳馬[特別出演])●東京都教職員再教育センター上田指導主事(石原良純)●天童喜一校長(平泉成
善人面をして柔らかく無難に行動する者に限って本性では善なんか信じてもいないという現実。そして正義のために熱くなる者に対しては冷遇と報復と嘲笑しか与えない現実。そうした中で理想に燃える若い小学校教師だった阿久津真矢(天海祐希)が、今のこの世間を見限り、希望を将来に託し、「教育は奇跡を起こせる」と信じて、やがては教育の鬼へと化してゆくだろうことのドラマティクな論理が、実に鮮やかに浮かび上がってきた。しかし無論この変貌は怨念に基づく復讐ではない。むしろ公私ともに色々な失敗を経験した末に成長し反省して生まれ変わったということに他ならない。
昨年の夏秋の全十一話のドラマから明らかだったように、あたかも「悪魔のような」黒装束の阿久津真矢の冷たく恐ろしい姿は、善人面していながら善人ではない連中で占められた現実の中で敢えて違和感ある存在であることによって、それへの強烈なアンティテーゼであり得るし、同時に、現実には確かに存在していながらも学校という名の監獄に通う子供たちの前からは巧みに隠されてある救いのない不条理を、生々しく突き付けて見せるための装置でもあるだろう。だが、今宵「エピソード1」で回想として描かれた阿久津真矢の過去の悲劇を知ることで知り得たのは、それが小学校教師としての節度を自身に厳しく課し続けるための抑止力でもあったらしいということだ。