渡る世間は鬼ばかり第十話

TBS系ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。橋田寿賀子脚本。石井ふく子プロデュース。山崎恆成演出。第八部第十話。宇津井健主演。
異様なエネルギーの漲った一話。それを構成する要素が主に二つあった。その一つ目は、小島愛(吉村涼)と田口誠(村田雄浩)の「愛と誠」結婚式における二大群衆の出現。田口誠の実家の近所にある神社での式典のあと近所にある公民館で披露宴を挙行したが、その会場への控の間には小島家一同のほか岡倉家、さらには岡倉姉妹それぞれの家族や菊村夫妻までも勢揃いしていた。これだけの顔触れが揃うことは滅多にない。まさしく最終回並みのオールスターキャストだったと云ってよい。中でも特に凄かったのは菊村康史(錦織一清)と本間英作(植草克秀)の初顔合わせ。なかなか熱気に満ちた場面ではあった。だが、もっと衝撃的だったのはそのあとに登場したもう一つの大群衆。田口誠の友人・知人・隣人たちが、予定の五十名を超えて約百名も、普段着のまま祝福に駆け付けたのだ。野々下邦子(東てる美)等の証言によると、彼ら田口側の出席者たち約百名は会場を占拠して大いに飲み食いを楽しみ、おかげで小島家・岡倉家側の出席者たちは会場内に居場所もない有様で、山のように料理が並んでいるのを前にしながらも、何も食えないで終わったらしい。それにしても、これだけの大人数がこの番組に出てくることは滅多にない。ことによると「渡る世間は鬼ばかり」史上最大規模の出演人数だったのではないかとさえ思える。実に熱かった。
もう一つの要素は当世流行「シロサギ」の気配。小島久子(沢田雅美)はラーメン店「幸楽」を乗っ取って愛娘の小島加奈(上戸彩)に継がせる陰謀を漸く断念し、考え抜いた末、自身のかつての夫で加奈の父でもある山下健治(岸田敏志)の会社設立に出資をして一儲けをすることを決意。そのための資金を得るため店主の小島勇(角野卓造)を泣き落として口説き落とし、店を抵当に入れて一千万円の借金をさせたのだ。だが、山下健治の事業は成功するのだろうか。彼の従来の成功が「幸楽」の名を借りたものだったことを想起し、またそれが以前から好評だったラーメン出前の延長上にあると云えなくもないものだったことを想像するなら、成功しない可能性が見えてくる。しかも小島久子の助力を得ての起業と知れば山下光子(奥貫薫)が離婚を申し出る可能性さえもないわけではない。そうなれば全て破局、破綻を来たさざるを得ないだろう。そのことは「幸楽」の倒産を出来しよう。そのとき何が起こるのだろうか。見逃せない展開になってきた。