渡る世間は鬼ばかり第十二話

TBS系ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。橋田寿賀子脚本。石井ふく子プロデュース。吉川厚志演出。第八部第十二話。宇津井健主演。
本間長子(藤田朋子)の「痛い」人間性が炸裂。なにしろこの女、まだ幼い一人娘の本間日向子(大谷玲凪)に対し、翻訳家として常に忙しい母親の仕事を邪魔しないよう気を使う程度の思いやりを持て!と叱ったのだ。親としての努めを一つも果たしていない人がどうしてそこまで言い張れるのか。そもそも日向子は騒いだわけでも何でもない。ただ三十分間だけテレヴィを見せて欲しいと願い出ただけだ。この時点で充分、日向子は母親に気を使い過ぎな位だ。普通の子供なら特に断りもなくテレヴィを点けるだろう。しかも日向子は、予め願い出た上、それを三十分間だけで終わらせるつもりだったのだ。実に母親思いの出来のよい幼女ではないか。それなのに長子は、もっと母親に気を使え!と叱ったのだ。こんな理不尽な話があるものか。余りに痛い。ところで、本間英作(植草克秀[少年隊])が朝「おかくら」に来たとき前髪を下ろしていたので印象が違った。一瞬、誰だか判らなかった。
なお、今回は田口愛(吉村涼)の怒りの場面もあったが、問題は田口誠(村田雄浩)がどうして真相を推察できなかったのか?ということ、そして彼がどうして「幸楽」の皆の見ている前で愛を詰問するような挙に出たのか?ということだ。もっと穏便に済ませる手はあったはずだ。
長子も愛も誠も、このドラマに出てくる人物はそれぞれ「痛い」奴ばかりなのだが、「こいつら痛い奴ばかりだ!」と笑いながら見ていて不意に吾が職場のことを想起したとき、長子や愛に優るとも劣らない水準の「痛い」人たちが幾人か存在することに気付いて、何時しか笑えなくなってしまったり。橋田寿賀子の凄さがそこにある。