トップキャスター最終回

フジテレビ月九ドラマ「トップキャスター」。坂元裕二脚本。佐藤直紀音楽。主題歌=Sowelu「Dear friend」。現王園佳正プロデュース。フジテレビドラマ制作センター制作。平野眞演出。第十一話=最終回。
CNBテレビ会長の結城英雄(伊武雅刀)は自身の書斎にある古めかしい蔵書のどの一冊をも、ここ三十年もの間一度も開いて見ることがなかったのだろうか。子息の結城雅人(谷原章介)が少年時代、父の影を求めて書斎の蔵書を読み耽ったときの痕跡は濃厚に残存していて、そこに初めて来た椿木春香(天海祐希)でさえ直ぐに発見することを得たのに。…とは思ったものの、知と情報の最前線に生きる職業人は存外、余程の必要性がない限り愛読書を読み返せないものなのかもしれない。他方、結城雅人はそうして難しい専門書を無理矢理に読み漁ったことで大いに成長したことだろう。率直に云って、子供のために噛み砕いた言説が子供を成長させるとは思えない。子供には理解できないような大人の世界に早くから親しんでこそ子供は成長できるものなのではないかと思う。子供に媚びた教育・知識・芸術に何の価値があると云うのか。社会の堕落の根源はそこにある。そうした問題を吾々テレヴィドラマ愛好者に対し厳粛に強烈に突き付けたのが昨年の夏の「女王の教室」阿久津真矢(天海祐希)だったのは云うまでもない。
ところで。本作品に出演した若手男子俳優二名中、松田翔太は、傍若無人な若者を演じつつも品のよさを感じさせて、実に株を上げたと思う。玉木宏は意外にコメディには向いていなかったのだろうか。華を感じなかった。