渡る世間は鬼ばかり第十三話

TBS系ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。橋田寿賀子脚本。石井ふく子プロデュース。第八部第十二話。宇津井健主演。
本間英作役の植草克秀[少年隊]と小島勇役の角野卓造の二人は泥酔の演技力にどんどん磨きをかけている。今や見所の一とも云える。さて、今回は一登場人物としての田口誠(村田雄浩)の劇中での「意味」が見えてきたかに思える。彼の存在は山下健治(岸田敏志)の悪を際立たせる役割を担っていると思しい。しかし問題は田口誠が無欲で堅実な善人には見えないことだ。確かに誰にも借金することなく新会社を設立しつつある田口誠に比較して山下健治が小島久子(沢田雅美)に莫大な借金をしたことは、小島家のラーメン店「幸楽」を倒産に追い込んでしまう可能性や、かつて妻だった女との仄かな不倫の気配、従って今の妻であり仕事の強力な味方でもある山下光子(奥貫薫)に対する二重の裏切り等、極めて嫌な印象を惹起する。とはいえ表向きは妻の小島愛(吉村涼)の協力を全て拒絶し、殆ど夫婦とも思えない程、他人も同然に振る舞っておきながら、その実、妻の側の熱烈な好意と理解に寄りかかって私生活上の(例えば家具を全て売り払ってしまう等の)甚大な困難を強いていることが、まともな善人の行為であるとは信じ難いのだ。