功名が辻第二十九話

NHK大河ドラマ功名が辻」。原作:司馬遼太郎。脚本:大石静。主演:仲間由紀恵上川隆也。第二十九話「家康恐るべし」。
羽柴秀次成宮寛貴)登場。鎧兜の似合うこと五月人形の如し。見た目こそ美麗なれども現実味は無之。実際まるで使い物にならない大将だった。唇の赤さが人形のような印象を強調していた。勝てる気で大口叩いていたときの勇ましい眼差しと、敗走して羽柴筑前守秀吉(柄本明)に叱責されたときの泣き出しそうな表情との落差が痛ましかった。
徳川家康西田敏行)が、織田信雄(大柴邦彦)の訪問を受け、相談を受けて見送ったあとの夜、本多作左衛門(田中健)・石川数正(大河内浩)・酒井忠次森田順平)との会話の中で織田信雄のバカさ加減を笑ったときの嫌味な笑いは実に狸親父と称されるに相応しい風情だった。襖を用いた場面転換は斬新だった。しかし何より迫力に富んでいたのは、バカな織田信雄黒田官兵衛斉藤洋介)の調略に乗り羽柴筑前守秀吉と和議を結んだのを知り、仕方なく大坂城石川数正を派遣するに際し伝達させるべき言上の文言を酒井忠次に伝える場面。東照神君徳川家康に相応しい大音声だった。
襖にしても画面三分割にしても、徳川家の神君と家臣団を描くところでは存分に暴走してみせるのがこのドラマにおける演出の方針であるのかもしれないが、非常に面白かったので断然その方針を支持したい。