結婚できない男第十話

フジテレビ系(関西テレビ制作)。ドラマ「結婚できない男」。脚本:尾崎将也。音楽:仲西匡。主題歌:Every Little Thingスイミー」(avex trax)。プロデューサー:安藤和久(関西テレビ)&東城祐司(MMJ)&伊藤達哉MMJ)。制作:関西テレビメディアミックス・ジャパン。演出:植田尚。第十話。
沢崎摩耶(高島礼子)が大企業への移籍を受け容れるつもりであることを告げた直後、自動販売機で缶ジュースを買おうとした桑野信介(阿部寛)が紙幣を投入しても機械に拒否されてしまい、それでも別の紙幣に換えないで何度も執拗に挑戦しては失敗を重ねていた後姿が絶妙に哀れだった。それを沢崎摩耶は「動揺していた」と表現したが、無論その動揺は自動販売機に向かったところに表れているのであって紙幣の投入を繰り返していたところに表れているのではない。あの哀れな後姿は、沢崎摩耶の決意に対する動揺とは恐らくは無関係に、あのような事態に直面した桑野信介には常に見られる姿であるに相違ないからだ。他方、沢崎摩耶の決意を翻させるよう真剣に働きかけるべきことを桑野信介に助言した早坂夏美(夏川結衣)。この助言の背後に、沢崎摩耶が桑野信介との仕事での関係を解消して私生活での関係に移行したいという考えを述べたことへの対抗心があったのは見易い。桑野育代(草笛光子)に見せた早坂夏美の不敵の笑みは計算通りの結果を得た勝者の表情に他ならない。なかなか恐ろしい。