仮面ライダーカブト第三十四話

テレビ朝日系。“スーパーヒーロータイム”「仮面ライダーカブト」。主演:水嶋ヒロ佐藤祐基。第三十四話。
物語は天道総司水嶋ヒロ)の未来と過去の謎を提起しつつ、熱気を帯びて盛り上がったわけだが、私的には無論、影山瞬内山眞人)の悲劇に圧倒されてしまった。悲劇と云うか残酷物語とでも云うか。彼の指導力、権力の殆ど唯一の源泉だったザビーゼクターを天道総司に奪われた彼は、天道総司の脚に縋り付いて、返して欲しいと懇願し、返してもらえないと知るや地面に俯けに臥して泣き喚いていた。その姿が実に哀れだったが、ZECT高官の三島正人(弓削智久)に天道総司の非道と矢車想徳山秀典)の非行について報告し、奴隷として生涯を捧げる覚悟を改めて示した上で支持、救援を求めたものの、逆に邪魔者扱いをされて追い出されていた姿も極めて悲しかった。しかし最も残酷だったのは、少し前まで彼の忠実な部下だったZECT精鋭部隊シャドウの連中の変わり身の早さ、鮮やかさ。彼らは皆、もはや隊長でも仮面ライダーザビーでもなくなった一隊員でしかない影山瞬なんか「ただの不協和音」、所謂パーフェクト・ハーモニーを害するだけと断罪し、豪雨で水流と化した冷たい路上に、あたかもゴミのように捨てたのだ。しかも残酷なのは、影山瞬が今こうして受けた仕打ちを、かつては彼こそが前任者に与えたのだからだ。これを人は自業自得と云うだろう。影山の惨めな様子を冷徹に見詰めていたのは彼の前任者、矢車想。少し前まで単なる羨望の語のようにさえ響いていた「おまえはいいよな」という矢車の語は、今や皮肉の水準をも超えた凄みを湛えているかに思えた。