たったひとつの恋第三話

日本テレビ系。土曜ドラマたったひとつの恋」。
脚本:北川悦吏子。音楽:池頼広。主題歌:KAT-TUN「僕らの街で」[作詞&作曲:小田和正]。制作協力:三城。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁。演出:岩本仁志。第三話。
ヒロト亀梨和也)が亡き父から受け継いだ神崎造船鉄工所の苦境が再び描かれた。第一話では、工場に来て借金の返済を迫る銀行員に対し彼が頭を下げる姿が描かれたが、今宵の第三話では、神崎造船鉄工所との契約を一方的に切ろうとする有限会社佐伯船舶の佐伯社長(中村俊太)を訪ねた彼が、苦境を訴えつつ粘り強く頭を下げて契約の継続を願い、夜遊びの場にも付き合わされた挙句、侮辱されても耐え、土下座までもさせられていた。
佐伯は、ヒロトの前で、ヒロトの亡き父の死因が自殺であることを部下たちに語り、それが保険金で借金を返させて家と会社を守るための死だったことをも明かして笑いものにした。ヒロトにとって父の悲劇を笑われたことは最も耐え難い屈辱だったが、ヒロトが土下座を決意したのも父の思いを汲んでのことだった。亡き父が自殺をしてでも守り抜きたかった工場を、今、自身の代で潰すわけにはゆかないと思ったからだった。土下座をすることによって却って意地を見せたのだ。
その後、佐伯船舶は神崎造船鉄工所との契約を継続することを決めたばかりか、さらに別の業務をも契約に追加したいことを告げた。ヒロトの意地に共感したに相違ないが、そうであれば佐伯社長は案外「人情派」だったわけだろう。しかるに豹変の原因は何だったのか。その意味を探るには、彼が己の部下の社員数名を「若いの」と形容したあと自身も実は意外に若いことを付け加えたこと、ヒロトの格好に文句を云っていたことを踏まえるべきだろう。そして無論、どうやら佐伯の父親も亡くなったらしいことがこの話の前提だ。数年前のことだったかもしれないし、急逝だったかもしれない。死因はどうあれ父が亡くなったことで彼は突然、父の会社を継がなければならなくなったのだろう。会社の経営には余裕がなく、若い社長の彼は、年齢と経験に見合わない重責と労苦に耐え続けてきたことで今や実年齢よりも老け込み、性格も気難しくなってしまっているわけだろう。そんな彼は、ヒロトの胸に渋く光る奇妙な形のペンダントに遊び人の気配を感じて、苛立っていたに相違ない。似た境遇にありながらも自分のようには老け込みもしないでカッコよさを保っているかに見えるヒロトは父の無念の死を無駄にしているのではないか?との疑念を、佐伯は抱いていたのではなかったろうか。だからヒロトの意地を知ったことで一転、云わば戦友として認めることができたに相違ない。
そして、ヒロトのあのペンダントは父の形見だったのだ。
[登場人物&出演者]ヒロト=神崎弘人20歳(亀梨和也KAT-TUN])/ナオ=月丘菜緒20歳(綾瀬はるか)/コウ=草野甲20歳(田中聖KAT-TUN])/アユタ=大沢亜裕太20歳(平岡祐太)/ユウコ=本宮裕子20歳(戸田恵梨香)//神崎造船鉄工所修理工(田口浩正)同造船鉄工所修理工(浜田晃)同造船鉄工所経理(大島蓉子)レン=神崎廉10歳(斎藤隆成)//月丘達也25歳(要潤)//月丘みつこ48歳(田中好子[特別出演])/月丘雅彦55歳(財津和夫)/神崎亜紀子48歳(余貴美子)。

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