仮面ライダーカブト第四十話
テレビ朝日系。“スーパーヒーロータイム”「仮面ライダーカブト」。主演:水嶋ヒロ&佐藤祐基。第四十話。
蟹ワームから人間に戻った間宮麗奈(三輪ひとみ)を、神社の境内で助け起こして口説いていた仮面ライダードレイク=風間大介(加藤和樹)。そこに「いいよな、おまえは」の決め台詞を放ちながら現れた矢車想(徳山秀典)と影山瞬(内山眞人)。影山瞬にとって間宮麗奈はZECTシャドウにおける己の転落を惹き起こした仇だったわけだし、風間大介も宿敵だったわけだから、間宮麗奈がワームではなくなった今、彼等をまとめて叩いておくという選択には特別な思いがあったのかもしれない。しかし思えば、矢車想にとっては両名とも余り馴染みのない相手だったわけなのか。決め台詞の一つとも云える「おまえ今、オレを笑ったか?笑いたきゃ思い切り笑え」の言を呟きながら間宮麗奈を攻めようとした矢車想は、敵の瞳の奥に闇を見て、己と同じく「地獄」を見たらしいことを物語るその瞳に共感し惹かれたのか、どうやら片想いに落ちた模様。ゴン(神崎愛瑠)の消火器攻撃によって撃退されたあと、矢車想は叢の小さな花を見詰めて物思いに耽っていた。微妙に幸せそうな表情をも浮かべながら。そんな「アニキ」に厳しく詰問した影山瞬。「まさか…間宮麗奈に惚れたんじゃないよね?…まさかね。俺たちは闇の住人だもんね?」と責めていた彼の苛立ちを隠せない口調と悔しそうな表情がここでの最高の見ものだったのは云うまでもない。さらにそのあと間宮麗奈の危機を救った矢車想。彼に対する影山瞬の怒りは凄まじかったが、一時的にワームに戻った間宮麗奈と風間大介との二人限の対峙の場にまで乗り込んで再び女の前で格好よいところを見せようとした矢車想は、逆に蟹ワームの強力な一撃で投げ飛ばされてしまった。恋に破れ、心身ともに傷だらけで、行く宛もなく一人で寂しく歩いていた矢車想の疲れ果てた背中。ところが、そこに現れたのは影山瞬だった。温かく迎え入れるような声で「おかえりなさい。アニキ」と声をかけた笑顔の影山瞬に、矢車想は呟くように一言「ただいま」と応えた。目を背けようとしていたのは多分、会わせる顔もないと思ったからだろう。しかし影山瞬は矢車想の肩を強く抱き締めて、二人一緒に歩き去った。このとき矢車想があの叢の小さな花を踏み付けていったのが泣かせる。想い起こせば二週間前、第三十九話の、矢車想と一緒に河原に座して「兄弟ラーメン」を食いながら影山瞬が、近くにいた犬と飼い主の様子に見惚れ、飼い主に褒められる犬を羨んでいた話は、矢車想のこの結末へ向けた遠い伏線だったのか。