月九のだめカンタービレ第五話
フジテレビ系。月九ドラマ「のだめカンタービレ」。第五話。
原作:二ノ宮知子『のだめカンタービレ』(講談社「月刊Kiss」)。脚本:衛藤凛。音楽:服部隆之。主題曲(序曲):ベートーフェン「交響曲第七番イ長調op.92」/(終曲):ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」。プロデュース:若松央樹&清水一幸。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:川村泰祐。
桃ヶ丘音楽大学の学園祭における演奏会。一つ甚だ不満だったのは、「Sオケ」の演奏したガーシュウィン作曲ラプソディー・イン・ブルーが原作から余りにも懸け離れていたこと。楽器編成に関する編曲は作品に新鮮味を与え得るが、曲そのものの形に関する編曲は往々作品の生命を弱らせることにしかならない。しかるに今宵のあの演奏の場合、曲を形作る各部分の順番までも大幅に変更してしまったため、作品の生命を奪い去ってしまったのだ。映像作家の大根仁は映画「スウィングガールズ」の最終場について「肝心の演奏が全然スウィングしていない」と厳しく評したことがあったかと記憶するが、その評言は「Sオケ」ラプソディー・イン・ブルー演奏にこそ当て嵌まると云えるかもしれない。でも、それは今宵の場合、演奏や楽器の問題であるよりは曲それ自体の改変による音楽の破壊の問題なのだ。
とはいえ音楽大学の学生として過ごした四年間の最後を飾るはずの演奏会を存分に楽しんでいた峰龍太郎(瑛太)率いる「Sオケ」衆の余裕の盛り上がり様に比して、自ら熱心に売り込んで頼み込んで漸く指揮者に抜擢してもらった大河内守(遠藤雄弥)が「Sオケ」を前に必死の形相で指揮棒を振っていたのは面白かった。「この学校で二番目に有名な指揮科の大河内」を自称し続けてきた彼のことを知る者は「Sオケ」に一人もなく、有名でも何でもなかったわけだが、ともあれ彼もまた「Sオケ」衆と同じく、学生生活の最後に一度でも華やかな演奏会の舞台に立ちたかったわけなのだろう。
千秋真一(玉木宏)が既に野田恵(上野樹里)のいない生活を物足りなく思うようになっていたのも面白かった。野田恵の顔を見た瞬間に彼が笑顔になっていたのは今宵の第五話における一番の見所だったろう。