仮面ライダー電王第三話

テレビ朝日系。“スーパーヒーロータイム”「仮面ライダー電王」。主演:佐藤健。脚本:小林靖子。監督:長石多可男。第三話「アウトロー・モモタロー」。
弱い少年が不思議な力を得て強くなる…というのは何時の世の少年も夢見る物語の基本形と云えるだろう。例えば「ドラえもん」はそうした夢をそのまま描きつつ、結局は努力なくして真の力を得ることはないことをも教えている。二〇〇五年十二月二十五日放送「仮面ライダー響鬼」四十五之巻における桐矢京介(中村優一)の「陰陽環」の物語がそれに近い形を取ったのは云うまでもない。それに対し、野上良太郎佐藤健)に生じた変身物語は一見そうした夢の形を描いているかに見えて、実は二重の意味で異質だ。なにしろ彼は不思議な力を得て強くなりたいと願っていたわけではないし、またその不思議な力は彼を強くするよりはむしろ彼の体を借りて彼の意図しない行動に走ろうとしがちだからだ。「ドラえもん」や「陰陽環」では問題は力そのものにはなく力を使う側にあるが、良太郎の変身物語では問題はどこまでも不思議な力の側、モモタロス(声:関俊彦)の側にある。今朝の第三話の場合、良太郎は、モモタロスの見境のない(そして悪意もない)暴走の所為で山越佑(浪岡一喜)の共犯者となり、悪徳金融業者=暴力団どころか警察にまで追われる身と化した。街を破壊する者を倒すことや、悲しみ悔やんでいる不良少年を癒すことについては良太郎も進んで行動するが、モモタロスに体を貸したり時空を超えたりすること自体には必ずしも納得してはいないのだ。
とはいえ視聴者にとってモモタロスは憎めない奴だ。悪徳金融業者から大金を奪い取ろうとした山越佑がモモタロスに協力を求めた際、その報酬としてモモタロスが「9350円」を要求したのは、良太郎にその金額を返したかったからだろう。あの赤いジャケット等を購入するため良太郎の財布の全財産を使い込んでしまったのを反省し、何とか損失補填をしておきたかったわけだ。
時間を旅行する電車「デンライナー」のオーナー(石丸謙二郎)と良太郎との初の正式な対面があった。そのときオーナーは「チケット又はパスがない者は何人たりとも時を超えてはならない。絶対に」ということを述べた。しかし良太郎は先週、不良のテツオ(落合扶樹)の悲しみを少しでも解消するため「デンライナー」に連れ込み、彼の母の逝去する直前へ移動させた。テツオがチケットもパスも所有していなかった以上、これは本来オーナーにとって全面的には賛同し難い行為だったに相違ない。問題は至る所に潜んでいる。