仮面ライダー電王第四話

テレビ朝日系。“スーパーヒーロータイム”「仮面ライダー電王」。主演:佐藤健。脚本:小林靖子。監督:長石多可男。第四話「鬼は外!僕はマジ」。
野上良太郎佐藤健)の頑固。彼は、彼の体を勝手に借りたモモタロス(声:関俊彦)が山越佑(浪岡一喜)の泥棒行為に加担したのを許さなかった。悪を許さない正義感に燃える漢だからか?否、少々違うようだ。なぜなら彼は何時も不良連中に「カツアゲ」される度に財布を明け渡し、要するに或る意味では悪を許してもいるのだからだ。今回も悪徳金融業者の小川(外川貴博)や大井(阿部亮平)に追い詰められたとき自身の財布を取り出し、わずかでも金を渡して勘弁してもらおうとして、大井を「ガキのカツアゲじゃねえんだぞ!」と怒らせてしまっていた。良太郎の怒りが向かうのは、抽象的な道徳としての「悪」それ自体に対してではなく、金や物を盗ることで人を悲しませ苦しめることに対してなのだ。たとえ泥棒の相手が悪徳金融業者であろうとも、泥棒によって彼等を苦しめることを良太郎は許さない。しかし彼自身は、カツアゲされて金を盗られることの悲しみ、苦しみに堪えるのに甘んじるわけなのだ。彼には自己犠牲の精神がある。
良太郎のそうした精神は彼の行為を貫いている。例えば彼は、山越佑がモモタロス=良太郎を用心棒に雇って泥棒を働いたことを知って、モモタロスの代わりに責任を取って山越と一緒に自首しようとした。また、彼は、本来は一人で変身してイマジンと闘える程には強くはないのに、泥棒の片棒を担いだモモタロスの力を借りないで、敢えて一人で闘おうとした。今朝の話の前半、山越を連れて飛び去ったイマジンを追跡しようとして、変身しようとしたものの怯えて腰を抜かしてしまった良太郎の姿は健気で悲しかった。だからこそ今朝の後半、街の人々を守るため改めて一人で立ち上がった良太郎の姿が、ますます健気で頼もしかった。そんな彼のためにモモタロスが力を貸そうとしたとき、彼は「“ごめんなさい”は?」と云って反省と謝罪を求めた。まるでオスカー・ワイルドの「幸福の王子」のような良太郎の自己犠牲の精神は、自身を傷付けてでも人を傷付けたくはないという頑固なまでの強さのある優しさなのだ。モモタロスの云う通り「頑固で根性ある」男子なのだ。
良太郎が一人で苦戦していた間、デンライナーの客室でモモタロスが悶々としていた様が傑作だった。モモタロスは憎めない。
後半の戦闘の場でモモタロスが敵のイマジンの鞭を掴んで引き寄せて斬ったのは、大河ドラマ風林火山」における殺陣をも想起させて面白かった。
ところで、悪徳金融業者の大井を演じた阿部亮平は、二〇〇四年夏のテレヴィドラマ「ウォーターボーイズ2」では鮮魚店の三兄弟の長男=鯛造を演じて九月七日放送の第十話に激動を生み、昨年夏「マイボス・マイヒーロー」では榊真喜男(長瀬智也)相手にアグネス・プリン争奪戦を繰り広げていた。