大河ドラマ風林火山第七話

NHK大河ドラマ「風林火山」。原作：井上靖。脚本：大森寿美男。音楽：千住明。主演：内野聖陽。演出：磯智明。第七回「晴信初陣」。
北条氏康（松井誠）は己の精神の弱さを警戒し健康をも心配しているが、真田幸隆（佐々木蔵之介）は己の眼力と胆力と体力を信じている。北条の用心深さは好ましいが、真田の大胆不敵の強さも好ましい。戦国の大名や武将にも色々な生き方があって英雄にも様々な考え方があったのだ。この対比を鮮やかに描き得た点だけ見ても、このドラマは光っている。
山本勘助（内野聖陽）に対する北条と真田それぞれの態度の違いがその対比の帰結であるのは見易い。得体の知れない浪人を抱えるのはそれ自体も危険だが、しかも山本勘助は異様なまでの知力と武勇と、さらには怨念をも秘めていたのだ。こんな不気味な人物を抱えることについては、くれぐれも慎重でありたい。北条は、内心は勘助を信頼しながらも表向きはそんな危険な賭けを避け、真田は賭けた。
武田信虎（仲代達矢）が三条（池脇千鶴）相手に語った武田晴信（市川亀治郎）への思いは、嘘だったのだろうか。もちろん単純にあのまま本心ではないだろうが、どこまでも嘘だったわけでもないように思える。晴信にもっと必死に懇願させたかったというのが信虎の本音ではないだろうか。晴信は何時も何事にも自信満々堂々としていて愛らしくないのは確かだ。計算され尽くした冷静な配慮ではなく、もっと純粋な無心の、必死の誠意を、子に対し期待していただけではないのかと想像される。