大河ドラマ風林火山第二十二話

NHK大河ドラマ風林火山」。原作:井上靖。脚本:大森寿美男。音楽:千住明。主演:内野聖陽。演出:福井充広。第二十二回「三国激突」。
太原雪斎伊武雅刀)が久々に登場。甲斐の躑躅ヶ崎館を訪ねた。今川が北条を攻めるに際し、武田からも援軍を出して欲しい旨を伝達に来たが、どうも様子が尋常ではなかった。主君の意思をまるで他人事のように表現したかと思えば、北条の苦境を強調した挙句、「よくよくお考えくださりませ」と述べて理解を求め、深々と頭を下げたのだ。尋常ではない。そもそも彼のような重臣が直々に使者として来訪したのも妙なことだ。ここにおいて彼には含意があった。そして彼は、今川とも北条とも通じているはずの小山田信有(田辺誠一)にその意を読み抜いてもらうつもりだったようだ。しかし生憎、小山田には読めなかった。彼の含意を感じ取り得たのは一人、武田晴信市川亀治郎)のみだった。山本勘助内野聖陽)はそれを感じ取ることさえなかったが、あくまでも兵法の論理、軍の論理に沿って最善の策を提案し、晴信は雪斎の意に沿うのは勘助の策であることを瞬時に理解した。
雪斎は勘助に「そなた、よい主に仕えましたな」と云った。今川義元谷原章介)は今なお勘助の才を認めたくない様子だったが、寿桂尼藤村志保)は庵原之政(瀬川亮)に対し、どうして勘助を引き抜こうとしないのか?と詰問した。勘助の才を解したのは流石だが、しかし勘助の才が晴信のような主君を得て初めて発揮され得たことを解した雪斎はさらに鋭かった。他方、北条氏康(松井誠)も、勘助を自ら召抱えることなく武田に譲ったことで結局は命拾いしたことを解した。勘助の才を使いこなせる者に勘助を譲ったことこそが己の「見る眼」の確かさの証明であると理解したのだ。
勘助と再会したときの庵原之政の「久し振りじゃのう!」の言は初陣のときの彼の言「武者震いがするのう!」を想起させた。