わたしたちの教科書第二話

フジテレビ系。ドラマ「わたしたちの教科書」。第二話。
脚本:坂元裕二。音楽:岩代太郎。主題歌:BONNIE PINK「Water Me」(ワーナーミュージックジャパン)。プロデューサー:鈴木吉弘&菊地裕幸。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:河毛俊作
藍沢明日香(志田未来)が幼かった頃、血の繋がりのない母として三ヶ月間だけ過ごしたことのあった積木珠子(菅野美穂)の、別れの日の思い出。電車で二駅だけの片道「旅行」。タイヤキを尻尾から食う食い方。別れ際の「ありがとう」。この話に心動かされ涙を流し、タイヤキを買いに走った臨時教員の加地耕平(伊藤淳史)。タイヤキ一個を積木珠子に渡し、一個を亡き藍沢明日香に供え、そして一個を自ら尻尾から食いながら泣いた彼が、本当に「よい人」であるのは間違いない。そんな善人を、積木珠子は騙した。喜里丘中学校にイジメがあったのかもしれないと思う…という加地耕平の言を、積木珠子は密かに録音していたのだ。小さな録音機器をわざわざ隠し持って密かにあの言を録音しておいたということは、あの言を重要な証言として利用するため、あの言を吐かせることを予め意図していたということに他ならない。神は善い人に褒美を与えるわけではなく、悪い人に天罰を与えるわけでもない…という積木珠子の言は、善い人である加地耕平に敢えて罰を与える考えを表明したものに他ならなかった。だが、それは理不尽だろうか。見逃し難いのは、善い人であるはずの加地耕平が、藍沢明日香のカバンの件を早くも忘れていたことだ。藍沢明日香が中学一年のときから悪質なイジメを受けていたことを物語るはずのあの凄惨な証拠品を、彼はどうして忘れ得たのだろうか。ここにおいて善い人もまた天罰に値し得ることを知る。善い人は人を疑わないから、悪人の罪を見破ることができない。副校長=雨木真澄(風吹ジュン)の巧妙にも露骨な隠蔽工作にさえ気付かなかった。その結果として、善人が悪の片棒を担いでしまう。
八幡大輔(水嶋ヒロ)は思いのほか素直な人だったようだ。なぜなら金八先生のような理想の教師に憧れて教師になる者は最も教師には向いていないという彼の言は、彼自身を正確に表現し、告白していたのだからだ。