喰いタン第二話

日本テレビ系。土曜ドラマ喰いタン2 KUI-TAN 2」。第二話。
原作:寺沢大介(「イブニング」連載/講談社)。脚本:伴一彦。音楽:小西康陽。主題歌:トリオ・ザ・シャキーン「愛しのナポリタン」(ジャニーズ・エンタテイメント)。プロデューサー:次屋尚&山本由緒。協力プロデューサー:(アベクカンパニー)和田豊彦&井下倫子。制作協力:アベクカンパニー。演出:中島悟(アベクカンパニー)。
朝、横浜ホームズ・エージェンシーに包丁片手に立て籠もった逃亡者の「パスタさん」こと長瀬(近藤公園)。食いしん坊の探偵KUI-TAN高野聖也(東山紀之)と出水京子(市川実日子)、野田涼介(森田剛)の三名は人質にされてしまった。そこに容疑者を追跡して来た神奈川県警横浜みなと警察署の緒方桃警部(京野ことみ)と五十嵐修稔刑事(佐野史郎)。両名の呼びかけに対し京子が機転を利かせて応えたことで、両名は中に確かに長瀬がいることを察した。しかし警官隊に完全に包囲されたホームズ・エージェンシーの中では、無実を主張する殺人容疑者=長瀬の言い分について検証し解決への手がかりを得るため、事件の舞台となった近所のイタリア料理店「ヴィーノ」で殺害された店長の得意料理スパゲッティ・ボロネーゼの味を再現すべく、高野と涼介と京子の三人が長瀬と一緒に料理をし始めていたのだ。
こうして今宵の第二話の舞台は殆どがホームズ・エージェンシーの内と外だけだった。山内崇署長(伊東四郎)が朝食(スパゲッティか何か?)を食いながら捜査の指揮を執っていた横浜みなと警察署や、金田一少年=かねだはじめ少年(須賀健太)が木下黎(小池里奈)とデイトをしていた喫茶店、長瀬が昼三時までに行く約束をしていた港、長瀬の妻が幸せの黄色いハンカチを掲げて待つ家等、幾つかの短い場面を例外として、舞台は主に主人公たちの「家」のみ、しかも起きた出来事は朝食時から昼食時までのわずか数時間のみで終わったらしいのだ。実に良質な「ホーム・ドラマ」だったと評したい。シチュエイション・コメディに近かったと云ってもよいかもしれない。
今宵の客演が近藤公園だったのもその点で絶妙だったと思う。有名な劇団「大人計画」の一員で、映画「ウォーターボーイズ」をはじめ多くの映像作品にも出演しているとはいえ世間一般には必ずしも有名ではないと思われる彼が今宵のドラマで物語の鍵を握る人物、云わば第二の主役を演じ得たところにこそ、このドラマの真髄がよく表れていたとさえ云えるだろう。
閉じられた空間、限られた時間の中で主人公たち数人の言葉と身振りの応酬だけで物語の最も重要な部分を推進してしまう演劇のような作風は、一年前の「喰いタン」の後半、具体的に云えば三月四日放送の第八話では、既に確立していた。高野や涼介や京子や金田一の軽快な応答の中で、料理をめぐる薀蓄、美味礼賛の哲学や、逆に殆ど無意味でさえある「小ネタ」も連発されつつ、物語の意味が明かされてもゆくのだ。