わたしたちの教科書第六話

フジテレビ系。ドラマ「わたしたちの教科書」。第六話。
脚本:坂元裕二。音楽:岩代太郎。主題歌:BONNIE PINK「Water Me」(ワーナーミュージックジャパン)。プロデューサー:鈴木吉弘&菊地裕幸。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:西坂瑞城。
瀬里直之(谷原章介)が積木珠子(菅野美穂)を解雇し決別したのは藍沢明日香(志田未来)の件にかける珠子の意を理解するからに他ならない。互いを真に深く愛するからこそ両名は、互いを今まで一度も愛したことがないと告白し合わなければならなかったのだ。恋の描写として実に秀逸だ。
喜里丘中学校の副校長、雨木真澄(風吹ジュン)は、公務員の典型であり模範であると云わなければならない。冷徹に事態を把握して、大城早紀(真木よう子)と加地耕平(伊藤淳史)とをまるで脇侍のように従えて、着実に問題の解決、綱紀の粛正、秩序の快復を断行してみせた。しかもこの達成されつつある構造改革は実のところは何一つ真実の解明でも改善でもなく、逆に全てを糊塗するに過ぎない。校内に見出された無数の落書を加地耕平が、八幡大輔(水嶋ヒロ)や吉越希美(酒井若菜)の協力を得て、白く塗り潰したように。だが、役人の仕事はそうであらざるを得ない。なぜなら世の市民の代表としての政治家も、新聞やテレヴィ等の言論も、結局のところ本質なんか求めてもいないからだ。政治家も言論も、己等を正義の味方に見せかけるための演出を求めているだけなのだ。
雨木副校長の粛清によって追放された戸板篤彦(大倉孝二)は、積木珠子に接近し、藍沢明日香の事件に関して情報を提供したいと申し出た。無論それは金目当てに過ぎないが、たとえそうであっても提供される情報が真に有意味、有益であれば珠子にとっては望ましい。しかし有意味、有益な情報であるかどうかは定かではない。なぜなら借金を背負い路頭に迷っている人物からの、金目当ての情報提供なのだからだ。