花嫁とパパ第十一話

フジテレビ系。ドラマ「花嫁とパパ」。第十一話。
脚本:いずみ吉絋。音楽:佐橋俊彦。挿入歌:時任三郎「君の帰る場所」。エンディング主題歌:加藤ミリヤ&COLOR「My Girl feat. COLOR」。企画:金井卓也。プロデュース:稲田秀樹共同テレビ)&三田真奈美(共同テレビ)。制作:フジテレビ&共同テレビ。演出:石川淳一共同テレビ)。
三浦誠二(田口淳之介KAT-TUN])は父、誠造(大和田伸也)のため静岡にある実家の呉服店を継ぐことを決意し、宇崎愛子(石原さとみ)は、自身を生んで亡くなった母の変わりに、父、賢太郎(時任三郎)と一緒に生きてゆくことを決意した。互いに互いの両親を愛することで互いへの愛を固め深めてきた両名は今、そのことのゆえに別れざるを得ないと考えるに至った。
ドラマとは行為者(ドラーン)を描くものであり、そして主人公の行為の必然の帰結として苦しみや恐れ、悲しみが生じることが詩学における「悲劇」の定義だろうが、その意味で今宵このドラマは悲劇的だった。宇崎愛子が三浦誠二から贈られた婚約指輪を返還して別れを告げたのは悲劇の発端であり、また悲劇そのものでもあった。その悲劇の果てに、それをなかなか受け容れることのできなかった誠二が、ついには、母、房江(田島令子)の温かな心配をも振り切って敢えて本心に反して父の命令に従うことを決意しつつも、それでもなお、自身のこの決意が、宇崎愛子と賢太郎の父子と出会わなかったならあり得なかったはずであることだけは理解して欲しいと説いた。それは悲劇の英雄の演説のようでさえあった。なにしろ、その出会いがもたらした決意はその出会いを捨てることを必然化するのだからだ。そこにおいて行為と情念の論理が貫かれていることが、詩学においてカタルシス(情念の浄化)と云われるものに他ならない。とはいえ元来このドラマの魅力は、何事にも前向きであろうとする人々を描く喜劇性にあった。しかるに喜劇とは、過程においてどれだけの悲劇性を含有していようとも、最終的に喜びによって結ばれるドラマのことに他ならない。次週の最終回には喜劇に戻ることを待望したい。