仮面ライダー電王第二十一話

テレビ朝日系。「仮面ライダー電王」。主演:佐藤健。脚本:小林靖子。監督:舞原賢三。第二十一話「ケンカのリュウ儀」。
冒頭、デンライナーの食堂車内、ゼロノスの謎について語る野上良太郎佐藤健)とオーナー(石丸謙二郎)とハナ(白鳥百合子)の顔の近いこと。そしてリュウタロス(声:鈴村健一)を従えて踊るオーナー。それに比して、リュウタロス=良太郎の率いる不良少年ダンサー集団が桜井侑斗(中村優一)を襲撃すべく追い詰め包囲した場面の恐ろしかったこと。
リュウタロスのこの攻撃を止めさせようとしたハナをもリュウタロスは攻撃し、この不条理な暴力に怒った侑斗は、ハナを庇い、守るためゼロノスに変身して反撃に出た。ゼロノスに変身できる回数を限られている侑斗が、こんな「クダラナイ」私闘のために無駄に変身したくはないと思いながらも敢えて変身することを選んだ姿は、ヒーローそのものだったと云える。どう見てもリュウタロスが悪なのだが、悪意は全く持ち合わせてはいない。最も強い男が最も女に愛されるのであるというキンタロス(声:てらそままさき)の説を素直に信じ込んで疑わないリュウタロスは、己が侑斗よりも強いことを証明できれば、侑斗に代わって己こそが「おねえちゃん」=野上愛理(松本若菜)から最も愛される者になれると思い込んだだけだからだ。
これに先立ち、愛理の珈琲店ミルクディッパーを再び訪ねた侑斗は、名前を尋ねた愛理に対し「桜井侑斗」を名乗ったが、かつての婚約者についての記憶を失った愛理は彼の名前さえ憶えてはいなかった。その婚約者の「十数年前」の姿である(とオーナーによって推測されている)侑斗は、十数年後の己の婚約者であるはずの愛理のこの「冷たさ」に少し傷付いたようだった。
侑斗の変身するゼロノス、彼の乗車する牛の形の汽車ゼロライナーは、或る時間がイマジンによって消されたとき、ともに消えたらしい。そしてその時間とは特異点のハナ一人を残して消滅した時間だった。ハナは侑斗に聴きたいことがあると云ったが、侑斗は何を知っているだろうか。
愛理と侑斗の関係をめぐり婚約と愛との関係について質問したリュウタロスに対し、乱暴者のこの子どもを徒に刺激しないようにテキトウに誤魔化そうとしたウラタロス(声:遊佐浩二)と、寝て誤魔化そうとしても上手く誤魔化し切れなかったキンタロス。相手にされなかったモモタロス(声:関俊彦)。リュウタロスはキンタロスとウラタロスには親しみを込めて「熊ちゃん」「亀ちゃん」と呼ばわり、モモタロスには興味なさそうに冷たく「モモタロス」呼ばわり。
デネブ(声:大塚芳忠)に憑依された侑斗は、緑色の毛の混じる長い髪の中からデネブキャンディを取り出して、困っている人に差し出していた。それを受け取った菓子販売の会社員、田中(少路勇介)は実は何ら困っていたわけでもなく、単に二日酔いで休みたかっただけ。かつて「ぼくの魔法使い」で主人公みったん(伊藤英明)に「殺すぞ!」と云っていた売れない劇団員が今は怠惰な会社員になっていたのか。この男と無理矢理「契約」を締結したつもりの「ウサギと亀」イマジンも、営業課長(松澤仁晶)を痛い目に遭わせたいという彼の寝言をそのままの意に受け取り、課長に物を投げ付け、少し痛い目に遭わせただけで契約を完了した気になっていた。似たもの同士か。