山田太郎ものがたり第八話

TBS金曜ドラマ山田太郎ものがたり」第八話。山室大輔演出。
杉浦圭一(忍成修吾)の行動について概観し、考えよう。
彼は山田太郎二宮和也)に愛を抱き、夢中になる余り、何時しか尾行までもしてしまい、挙句、山田太郎が実は貧乏であること、大勢の家族を養うため夕方から夜まで働いていることを目撃した。衝撃の、意外な事実を知って動揺した彼はそのことを学校で中井正美(大塚ちひろ)相手に語ったが、この会話の内容は他の生徒たちの耳にも入り、奇想天外の作り話として受け止められ、所謂「都市伝説」として格好の話題とも化した。この話題を事実とは認め難い生徒たちは杉浦圭一を嘘吐きと呼ばわり、このような嘘を云うのは彼が山田太郎に嫉妬しているから、山田太郎を陥れたいからだと断罪した。これに対し彼は、己が山田太郎を陥れるわけがないこと、なぜなら山田太郎を愛しているからだ!ということを叫んだ。そして己が嘘を吐いているわけではないことの証明として、山田太郎の家を見付けるべく尾行してやることを宣言した。こうして山田太郎を尾行することになった彼は、一緒に付いてきた大勢の生徒たちとともに目撃した。偶々その日から山田一家の新たな住まいと決まった広大な洋館に山田太郎が入るのを。これを目の当たりにした杉浦圭一は再び衝撃を受けていた。
さて、これら一連の行動において少々奇異に見えるのは、杉浦圭一が、己の愛する山田太郎を敢えて陥れるようなことをしてしまったことだ。どうしてあんなことをしたのか。だが、ここで考慮すべきは、彼の行為が山田を陥れるものであると判断されたのは、貧乏であることを恥ずべきことであると信じて疑わない中井や池上隆子(多部未華子)や他の多くの生徒たちの偏狭な価値観においてのことに過ぎないということだ。山田太郎本人は無論のこと、一ノ宮校長(宇津井健)も御村託也(櫻井翔)も、この事実が秘められ隠されるべきものであるとは考えていないし、この暴露が深刻な問題であるとも考えてはいない。杉浦圭一も同じであると見るべきではないだろうか。彼は、愛する山田太郎が「貴公子」の外見に反して意外にも貧乏であるという事実に、愛をさえ抱いていたのではなかったろうか。それは換言すれば、山田太郎に対する彼の愛が、池上隆子の愛よりも深く固いということに他ならない。