受験の神様第七話

日本テレビ系。土曜ドラマ「受験の神様」。
脚本:福間正浩。音楽:池頼広。主題歌:TOKIO「本日、未熟者」[作詞&作曲:中島みゆき]。プロデューサー:西憲彦(日本テレビ)&鈴木聡(ケイファクトリー)&渡邉浩仁(日テレアックスオン)。製作協力:日テレアックスオン。演出:大谷太郎。第七話。
受験の神様と称される恐るべき中学生、菅原道子(成海璃子)が中学校の文化祭でヤキソバを作るの図。
一般に学園ドラマにおいて文化祭は最も楽しい挿話の一つであり得るが、その利点を活かした例は、最近では日本テレビ土曜ドラマの「野ブタ。をプロデュース」二〇〇五年と「マイ★ボス マイ★ヒーロー」二〇〇六年の二つ位しかなかったような気もする。しかるに、今年のこの土曜ドラマも文化祭という要素を見事に活かしてドラマを生動させた。普段ロボットのように無表情で冷徹な菅原道子の、そうした仮面の奥の優しさを垣間見せたり、家庭教師としての方針の確かさ、洞察の鋭さを明確化したり。現場で(社会の中で)身体を使って働くことが頭脳の働きを必要としていることを知ったり、逆に、学習の意味を真に理解するためには身体を使って社会の中で働くことが必要であることを知ったり。働くことで親への感謝の念を抱いたり。学校生活の楽しさを知ることこそが受験勉強に集中する上での最高の原動力となるという単純明快な真理も確認された。
菅原道子に連れられて梅沢広(長島弘宜)と西園寺義継(森本龍太郎)と手塚恵美(小薗江愛理)が梅沢勇(山口達也TOKIO])とともに、菅原道子の通う應林中学校の文化祭に参加して、和田沙織(石橋杏奈)のチャリティヤキソバ店を手伝うことを通して色々なことを深く学んでゆく過程は、ドラマとして実に鮮やかだった。
和田沙織の作ったヤキソバの余りの不味さに呆れて菅原道子が「あなたクビ!」と宣告したのも所謂お約束通りの云い方で面白かったし、かつて(第一話で)梅沢勇が菅原道子を探し求めて應林中学に来た際に痴漢と間違えられてしまったときの疑惑が再燃しようとしたり、夏期合宿(第四話)で梅沢広の出会った少女、福本亜紀(福地亜紗美)が文化祭のヤキソバ店に現れ、再会を果たしたばかりか、広と同じく早田中学を目指していることを明かしたり、色々懐かしい要素も再登場して合流し話を盛り上げた。西園寺義継に目をつけた少女たちはジャニーズJr.ファンだったろうか。「年上にモテルんだな」と梅沢広にからかわれた彼が「年下にもモテル」と強気で応じたのも、なかなか面白かった。菅原道子の「あなたはヤキソバが食べたいの?それともオコノミヤキが食べたいの?」という愛想の欠片もない(お約束通りの)怖い客引きに子どもが怯えて逃げ去ったのは傑作だった。
しかし今宵のドラマ最大の見所だったのは、云うまでもなく、手塚恵美が文化祭での労働を通しての学習を経て、涙を流しながら名門「應林中学校」受験への決意を表明し、両親=手塚由美(須藤理彩)と手塚晋作(大倉孝二)にその許しを請うた場面での、菅原道子の「わたしが、合格させます。そのためには地図を持ちなさい。」と告げた瞬間。あの瞬間のために、これまで二ヶ月間の、七話もの話が必要だったのだ。