大河ドラマ風林火山第三十八話

NHK大河ドラマ風林火山」。演出:田中健二。第三十八回「村上討伐」。
武田晴信市川亀治郎)の近習をつとめていた飯富源四郎(前川泰之)と春日源五郎田中幸太朗)が侍大将に昇格。それぞれ飯富三郎兵衛尉昌景、春日弾正忠虎綱と称した。…と云った具合にドラマでは描かれたが、どうやら実際には両名がそれぞれ侍大将になった時期も通称を称し始めた時期も全て別々だったようだ。ともあれ、ここでの一番の見所は、源五郎に対する晴信の激励。心のこもった言葉を、しかしエロティクな欲情に満ちた表情で与えたのだ。源五郎=春日弾正に軍師の素質のあることが晴信に愛されたのだろう…というのが山本勘助内野聖陽)の見るところだったが、視聴者の見るところ、晴信の寵愛には別の面があるのは明白だ。
春日弾正の鎧姿は五月人形の如く凛々しく美麗だったが、しかも不敵な強さをも感じさせた。
越後の長尾景虎Gacktガクト)に迎えられ、庇護下にあって上杉憲政市川左團次)は大いに浮かれていた。大勢の遊女たちを城内に招き入れ、取り囲まれて陽気に踊っていた。しかし彼の唯一の嫡男、竜若丸(太賀)が討死をしたのは昔話ではない。でも、そんなこと関係なく遊び呆けてしまえる点で馬鹿殿として抜きん出ていると云えるかもしれない。
村上義清(永島敏行)の受難の連続。またしても甲斐の武田家に敗北し、領土を奪われたばかりか、愛妻の玉ノ井(中島ひろ子)をも失い、支援を求めて越後に逃れ、援軍を得て反撃に出たものの、やがて一日で十六の城を奪われる程の無惨な敗北を喫して三ヶ月間で撤退、再び越後へ逃れた。もし義清の子、村上国清(中山卓也)が玉ノ井の護衛をつとめていたなら、玉ノ井は救われ得たろうか?否、むしろ国清までも失っていたろう。領土も妻も失った義清の越後での絶叫は世界の中心で救いを求めるかのようだった。