働きマン第六話

日本テレビ系。水曜ドラマ「働きマン」。
原作:安野モヨコ。脚本:松田裕子。主題歌:UVERworld浮世CROSSING」&働木満(沢村一樹)「働きマン音頭」。演出:佐久間紀佳。第六話。
今回は山城新二(吉沢悠)の話。大きな橋を造りたい!という夢を抱いて建設会社に勤務する彼は、就職以来これまでの数年間、マンション建設の現場監督を仕事ばかりをさせられ、夢に一向に近付くことのできない悔しさを感じていた。その思いを共有し得る社会人は少なくないだろう。しかし反面、彼には少々甘さがあったのも確かだ。建設の現場監督として働けるだけでも幸福だったのだと云えなくもないからだ。もし会社内の人事異動によって営業の部門にでも転向させられたら建設の現場から外れなければならなくなるだろう。そして実際、彼は今回、本社営業部への異動を命じられた。かねてより架橋事業の含まれる大型プロジェクトの部門に参画したくて本社への異動を希望していたところ、当の部門には採用されず、ただ本社への異動だけ認められたのだ。所謂「畑違い」の部署へ転向させられることの悔しさを、共有し得る社会人も少なくはないかもしれない。確かに悔しいのだ。会社を辞めたくなる程に悔しいことなのだ。生きる意欲も、意義も見失う程に。だが、ここで辞めてしまえば夢からは真に切り離されることだろう。もはや近付くこと自体が不可能にならざるを得ない。会社に勤務し続ける限り、本当の居場所に何とかして復帰できるかもしれない。復帰したときには既に大幅に出遅れ、もはや追い付くこともできなくなっているかもしれないが、それでもなお、復帰の可能性を完全に失うよりは復帰の可能性を少しでも残しておく必要がある。そう覚悟して初めて、「畑違いの職場であろうも頑張って生きてゆこう!」と決意できるものなのだと思う(少なくとも自分自身はそうだった)。若い山城新二がそうした決意をすることができたのは、週刊誌「週刊JIDAI」の編集部に勤務して大いに日々働いている恋人の松方弘子(菅野美穂)が「都心のマンション事情」という記事を書き、マンション建設という仕事の素晴らしさ、責任の重さを彼に気付かせてくれたからだった。それによって彼は、彼が大きな夢を見続けてきた反面、眼前の仕事の意義を深くは理解し切れていなかったことの未熟さ加減を思い知らされた。そして今後は与えられた一つ一つの仕事を真剣に受け止め、取り組んでゆこうと決意できたのだ。これは極めて大きな変革であって、逆に、それをもたらした松方弘子への彼の見方をも変革するものでもあったろう。恋人としての二人の関係を決定的に深めても不思議ではない。しかるにそれが反対方向へ進んでしまうとすれば、それは一体どういうことなのだろうか。