働きマン第九話

日本テレビ系。水曜ドラマ「働きマン」。
原作:安野モヨコ。脚本:松田裕子。主題歌:UVERworld浮世CROSSING」&働木満(沢村一樹)「働きマン音頭」。演出:南雲聖一。第九話。
全てが上手くゆく結末こそフィクションらしいと云うしかなかったとはいえ、豪胆社書籍部営業担当の千葉真(渡部建)の現実主義、合理主義、虚無主義は、大組織の一部門においてどんなに頑張ろうとも決して報われない仕事に従事しなければならない者の姿を、よく映していたと云えるだろう。実際、どんなに評価され得る成果を出そうとも誰からも決して評価されない仕事、評価されないどころか敵意さえも抱かれかねない程の、どうにも報われようもない類の仕事は存在するものだ。そうした現実を理解できていたのは、編集部の中では小林明久(荒川良々)のみ。彼には書籍部営業担当の経歴もあったのだ。しかし他の編集者にはそんな経験はないし、経験の欠如を補うだけの想像力もあるはずもない。なにしろ編集部の仕事には報われる瞬間というのが頻繁にあり得るから、報われる場面があるということを殆ど当たり前のことと思い込んでいる。ことに編集部内でも優秀な編集者と目される優等生の松方弘子(菅野美穂)は、頑張って働ければ働いただけ報われるはずであると信じて疑いもしていなかった。誠に世間を知らないと云わざるを得ないが、この世には現実に、世間知らずのまま定年退職まで過ごすことのできる人々も存在し得るわけなのだ。不条理と云わざるを得ない。そう考えるなら、千葉真が最後あのような形で「報われた」のは、いかにもフィクションならではの都合のよい展開でしかなくとも、やはり実によい結末ではあったと思う。