新番組=あしたの、喜多善男第一話

今宵からの新番組。
フジテレビ系(関西テレビ)。「あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜」。
原案:島田雅彦『自由死刑』(集英社)。脚本:飯田譲治。音楽:小曽根真。主題歌:山崎まさよし「真夜中のBoon Boon」。プロデューサー:豊福陽子関西テレビ)&遠田孝一(MMJ)。制作:関西テレビMMJ。第一話。演出:下山天
まだ初回の放送が終わっただけの時点ではあるが、何だか傑作になりそうな気配。かなり憂鬱な話ではあるが、適度に笑い所もあったし、憂鬱さ加減や気持ち悪さも含めて面白かった。
十一日後に自ら死ぬことを決意しなければならない程に、自身のこれまでの人生を嫌悪している喜多善男(小日向文世)。思い出しただけでも悲鳴を上げたくなる程の人生というのが一体どれだけ不幸に満ちていたのか、今のところは知らない。しかし、もう一人の彼自身(=胸中の自己)に挑発されるままに今までの己の人生を想起してしまったときの彼の様子を見るに、確かに思い出したくもない程に辛い人生だったのだろう…と思えてきてしまった。普段の彼の、何事にも自信のなさそうな、重く辛そうな表情と、それとは全く対照的な、カレーの名店で素晴らしいカレーを食ったときの至福の表情。全財産を現金(百万円)にしてカバンに詰めて、何時も携えて歩いているという状態それ自体のとんでもない危なっかしさ、不安定性や、そのカバンを、見るからに大事そうに抱えている彼の風情の弱々しさ。これら全てが全体として、形容し難い気持ち悪さを醸し出しつつ、妙に愛着や共感をも抱かせる。このドラマの現時点での見所の一つはそこだろう。
もう一つの大きな見所は、彼に付きまとい親切に振る舞いつつ着実に彼の財産を消費させている矢代平太(松田龍平)の、何を考えているのか解らない不気味な風情。気持ち悪さが心地よい。見入ってしまった。元アイドルの宵町しのぶ(吉高由里子)の柄の悪さも実によかった。
録画しなかったのが惜しまれる。そして次週からは裏番組として日本テレビ火曜ドラマ「貧乏男子ボンビーメン」が始まるが、果たして何れを録画して何れを見るべきか、大いに迷うところ。しかし「あしたの、喜多善男」の視聴を止めることは現時点では考えられない。