鹿男あをによし第二話

フジテレビ系。ドラマ「鹿男あをによし」。
原作:万城目学鹿男あをによし』。脚本:相沢友子。音楽:佐橋俊彦。企画:中島寛朗。アソシエイトプロデュース:石原隆。プロデュース:土屋健。制作:フジテレビ&共同テレビ。第二話。演出:鈴木雅之
先週の第一話を見て面白いと思ったのだが、今宵のはさらに面白かった。この調子で最終回まで行けば傑作になるに違いない!と思った。
赴任先の古都、奈良の公園で鹿に話しかけられ、衝撃を受け、信じ難い事実を夢想としか思えなかった小川孝信(玉木宏)は、翌朝、再び公園へ行き、鹿せんべい一束を購入して、それを手に持ち高々と掲げた。あたかもダンスの合間のポーズのような姿。そこへ林の樹々の間から鹿の群が一斉に駆け寄り、彼を幾重にも包囲しては鹿せんべいを欲した。あの駆ける鹿の群は終曲の映像に見る鹿たちだろう。煎餅を配りながら「おまえか?おまえか?」と訪ねる彼。煎餅に喰らいついてくる鹿たちの顔。迫力があった。
学校では、彼と堀田イト(多部未華子)の間の問題をさらにややこしくしようとするかのような学年主任の溝口昭夫(篠井英介)。彼をゴルフに誘う教頭の小治田史明(児玉清)。その会話を盗み聴いていたばかりか、小治田のゴルフの件で延々解説を始める古文教師の名取良一(酒井敏也)。そこへ合流してスポーツについての話を始める体育教師の前村さおり(キムラ緑子)。そこへ唐突に加わる歴史教師の藤原道子綾瀬はるか)。彼を叱るように強引に話を進める前村と、彼を見詰める藤原に挟まれ、うろたえる彼。変人たち連発のこの流れが素晴らしく面白かった。
藤原に誘われて剣道部の練習の様子を見に行った彼は、序でに指導者として練習にも参加させられ、そのまま顧問にさせられた。男子教師用の防具の胴を受け取ったとき埃を掃った下に出てきた鹿の文様に驚いた彼の様子は、鹿と彼との関係を知る視聴者には予想できた展開ではある反面、周囲の人々から見れば鹿の文様にどうしてそこまで衝撃を受けるのか全く判らないわけで、その辺の「空気」の断絶の様も絶妙だった。これは所謂「志村、後ろ!」状態だ。
小治田とのゴルフからの帰途、再び鹿に話しかけられた彼。「しかるべきとき、しかるべき女から」とか「しかし」とか、言葉の中にやたら「しか」の音が混じるのも心地よい。
噂話には興味ないと云いながら噂話ばかりの福原房江(鷲尾真知子)と福原重久(佐々木蔵之介)。
奈良女学館の校長の実家の経営する高級料亭「狐のは」で挙行された奈良女学館と京都女学館と大阪女学館の三校「大和杯」に関係する教師たちの懇親会。奈良の剣道部顧問に就任して藤原とともに出席した彼は、京都の剣道部の長岡美栄(柴本幸)、大阪の剣道部の南場勇三(宅間孝行)と同席した。京都女学館の「マドンナ」と称される長岡に群がる各校の男性教師たちと、誰にも相手にされない藤原。仕方なく自ら酌をして一人で飲んで酔っていた藤原教諭の姿が見ものだった。
狐の使いと目される長岡教諭から「三角」と称される大切な宝と思しい大切な荷物を受け取り、奈良へ帰る彼。もちろん藤原と二人で。彼と長岡との関係を疑い、嫉妬しつつ彼に甘え、「ここから一歩も歩けません!」と言い張り、背負ってもらう藤原。嫉妬に燃える藤原は長岡を「雌狐」と形容した。しかるに翌朝、まだ酔いの醒め切らない藤原は泥酔した自身が一体どのようにして帰宅することができたのかを全く憶えていなかった。これまた非道い。
しかし何といっても傑作だったのは今宵の最後の、小川孝信と鹿との言い争い。物凄く真剣な激しい争いなのだが、一方は鹿なのだ。その挙句、彼も鹿にされてしまった。鏡を見て初めて己が鹿であることに気付いて、衝撃を受けていた。その顔が笑えた。