悪魔という救い

昨夜は結局、かなり夜更かしをして菊池章太『悪魔という救い』を読了した。実に面白かった。著者は昔は中世ヨーロッパのキリスト教美術の緻密な研究で注目を集めた気鋭の芸術学・美術史学者だったが、いつの間にか哲学・比較宗教史学の教授になっていたとは。平易で歯切れのよい文章が、驚異的に深い学識と教養に裏付けられているのは一目瞭然。カトリック教会の正統な宗教行事としての(今日でも現役の)「悪魔祓い」について歴史学的に考察しつつ、それを通して次第に現代人の「心」の問題を浮かび上がらせてゆく思考のドラマティクな運動にも圧倒される。反面、冗談を交えた親しみ易い文章でもある。真に推奨できる面白い新書(朝日新書七百二十円)。
今日は小島毅足利義満 消された日本国王』を読み始めたが、流石に今宵は時間がないので、今日中には読み終わらないだろう。

悪魔という救い (朝日新書 (098))
足利義満 消された日本国王 (光文社新書)