渡る世間は鬼ばかり第八話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:荒井光明。プロデューサー:石井ふく子。第九部第八話。
岡倉大吉(宇津井健)は小宮怜子(池内淳子)に夢中の様子だが、岡倉家の五女、本間長子(藤田朋子)は両名の接近を快く思わないらしく、交際が親密化しない内から何とか両名を引き離すべく、父を厳しく責め立て始めた。
確かに小宮怜子という人が一体どういう人であるのか、たとえ麗しくも温かく上品に見えようとも、実態は未だ判らない。大吉も視聴者も、未だ何も知らないに等しい。だから急接近を警戒する長子の意を、必ずしも解し得ないわけではない。しかし岡倉家の姉妹たちの中でも五女の長子は、これまで三四十年間の生を、欲望の赴くまま勝手気ままにワガママ三昧に過ごしてきた点において、四女の大原葉子(野村真美)と双璧をなすと云うも過言ではないわけだから、果たして今さら父親の自由な恋への道への邪魔立てをし得る立場にあるか否か。無論そんな道理はないだろう。何ら説得力がない。偉そうなことを云う前に先ずは父親への寄生を自ら止めるべきだ。
他方、ラーメン店「幸楽」経営者一族の小島家の居間では、家長の妹である小島久子(沢田雅美)と家長の妻である小島五月(泉ピン子)とが正面衝突。普段の久子は非道い奴だが、少なくとも今宵のあの戦闘に関する限り、久子は何ら間違ってはいない。小島家の長男である東大生の眞(えなりかずき)に対するこのところの五月の態度は、眞の人間としての弱さに起因する人生の上での選択の甘さの問題を別にすれば、確かに大人気なく理不尽であり、それが一家の団欒を暗くするのみか、ラーメン店の厨房の雰囲気をも重くして士気を下げているのも確かである以上、そのことを厳しく責めることは家長の妹という強い立場にある者の義務でさえあるかもしれないからだ。久子があのように云わなかったら、他に誰が云ってくれたろうか。しかるにそんな久子を口汚く罵った五月。このドラマには今まで実に多くの嫌な人々(「鬼」と形容され得よう)が登場したが、ことによると今宵の五月は最も憎らしい人物の一であり得よう。