絶対彼氏第九話

フジテレビ系。ドラマ「絶対彼氏-完全無欠の恋人ロボット」。
原作:渡瀬悠宇絶対彼氏。フィギュアなDARLING」。脚本:根津理香。主題歌:絢香「おかえり」。音楽:福島祐子&audio highs。制作:フジテレビ&共同テレビ。演出:北川学。第九話。
若林ふじ子(真矢みき)が並切岳(佐々木蔵之介)に対して発した「なぜ恋人ロボットなんか作ったの?」という問いは極めて深く、この物語の本質を抉り出すものに他ならない。恋人ロボット「理想の彼氏」天城ナイト(速水もこみち)は、本来は井沢梨衣子(相武紗季)に固有の「理想の彼氏」ではあるものの、そもそも梨衣子の思い描いた「理想」が一般的な、ほぼ普遍妥当的なものでしかなかったからか、大概どの女子から見ても理想的な恋人であり得るかのようだ。しかるに肝心の梨衣子自身にとっては多分、少なくとも究極的には理想の彼氏として選び得ない。なぜなら梨衣子のみは、ナイトがロボット以外ではあり得ないことを知っているからだ。要するに、恋人ロボットは、その正体を知るのが選りにも選ってその所有者であり、しかるに正体を知る者にとっては恋の対象になり難いという構造が出来する以上、果たすべき本来の役割を全く果たし得ないのを本質としているのだ。
しかるに今、ナイトはロボットでありながら元来のプログラムの制限を超えて「心」のようなものを持ち始めている。もし彼が己の所有者に対して本気で恋心を抱き始めているとすれば、それは必ずや裏切られるだろう。その悲劇性を、人間であれば受け止め、克服することもできるだろうし、忘れることもできるだろう。だが、ロボットにそれは可能なのだろうか。若林ふじ子の問いは、そこのところを余りにも鋭く突いていると云わなければならない。
大手の洋菓子店ASAMOTO副社長の浅元将志(中村俊介)は浅元創志(水嶋ヒロ)をついに追放。しかし近い内に呼び戻す気が満々と見える。夏美(酒井彩名)の創志に対する決別の語は、菓子を作るという一つの道を窮めようとする程の者ならではの人生観、恋愛観の深さを感じさせてよかった。