学校じゃ教えられない!第二話

日本テレビ系。火曜ドラマ「学校じゃ教えられない!」。
脚本:遊川和彦。音楽:福島祐子&高見優。プロデューサー:大平太&桑原丈弥&井上竜太(ホリプロ)&太田雅晴(5年D組)。制作協力:ホリプロ5年D組。演出:猪股隆一。第二話。
水木一樹(中村蒼)と西川叶夢(森崎ウィン)と見城瞳(朝倉あき)の関係が絶妙で、彼等三人の間の言葉と心理の交錯を見ているだけでも充分に楽しい。このドラマの真の主題、真の見所は、彼等三人の関係にこそあるのではないだろうか。
叶夢は、自身をめぐる奇妙な関係に全く気付いていない。どこまでも能天気に陽気に天真爛漫に行動しているだけだ。そして彼は大親友の「カズ」こと一樹を心から信頼していて、困ったときには何時でも「カズ」が助けてくれると期待している。もちろん一樹は期待に応えようとするし、期待を裏切らない。だが、一樹は叶夢に恋心をも抱いてしまっている。一樹にとって叶夢は、無二の大親友であると同時に、密かに恋焦がれる人でもあるのだ。瞳はそんな二人を好ましく思い、一樹を応援したいと思い始めているようだが、他方、叶夢は、何かしら誰にも云えない秘密を共有していると思しい「カズ」と瞳との間には両想いの関係が成立しているのではないかと感じている。両名の秘密の中身が、まさか、自身に対する「カズ」の想いのことであるとも知らずに。
何か秘密のことを話し合っていると見えた瞳と一樹に叶夢が「おまえら、なんか怪しいぞ!できてんじゃないの?」とからかったとき、瞳は「そんなことには絶対ならないと思う」と断言した。でも、叶夢にはその真の意が解るはずもない。「え?なんで」という素直な反応が、文字通り無邪気で、面白い。一樹に対して叶夢が「俺たちの間には秘密はないよな?」と話しかけたとき、一樹は返答に困っていた。困るのは無理もない。
瞳は、一樹のこの苦悩を半分は面白がりながら、半分は本気で応援している。「ほんとに仲がいいんだね、あんたたち。二人がカップルになったら?」と云ったのも、半分は一樹をからかいつつ、実は叶夢の出方を試してみたのではないだろうか。しかし、叶夢は云った。「やめてくれよ、ホモじゃねえんだから。なあ、カズ?」。恐らく一樹は自身を「ホモ」だとは思っていないが、そう云われても否定できないことを自覚してもいるだろう。
一樹の「女って結構、男見る眼ないし」という言葉には実体験の裏付けがあるに違いない。彼は多分、叶夢が幾人もの女子たちに愛を告白しては毎回のように玉砕してきたのを間近に見てきて、叶夢の魅力に気付かない女子たちの見る眼のなさに常に苛立ってきたことだろう。叶夢から愛を告白されるという幸運を享受しておきながらそれを受け容れないとは、何と勿体無いことをしでかしてくれるのか!と感じていたのではなかったか。
ところで、瞳の応援には無論、半ば意地悪な面もある。「じゃあ、男はなんで女のこと好きになるわけ?結局、顔なんじゃないの?」という質問を叶夢と一樹に打つけ、これに一樹が「いや、別に俺は、そんなんじゃ…」と正直な反応を示したのを見るや、今度は「じゃあ、どういう人が好きなの?あんたは。聞かせてよ、好きなタイプ」と厳しく詰問した。もちろん一樹は答えられない。横にいた叶夢を見詰めるしかなかった。「好きなタイプ」は眼前にいるが、答えられない。男子を好きな男子にとって、好きな女子のタイプを聞かれること程に困る質問はない。嘘をつかなければならなくなるからだ。
こうした遣り取りの積み重ねの果てに、学校の食堂において一樹が叶夢のために展開した演説は、実に、彼自身の苦悩を真摯に率直に表現したものに他ならなかった。「俺、思うんだけどさ、自分が好きで好きで堪んない人が、こっちのこと好きになってくれたら、それって奇跡みたいなもんだって」。「俺たちってさ、今、何でも直ぐに諦めたりしてない?好きな人がいてもさ、フラレルのが怖くて告んなかったり、周りの目、気にして何もしてなかったり」。今宵の第二話の冒頭、一樹は叶夢から愛の告白をされる夢を見た。それは実現の見込みのない奇跡の夢なのだ。
この演説は、横山永璃(仲里依紗)を助けるために応援と弁護の演説をしようとして言葉に窮した叶夢のため、代わりに引き受けたものだった。永璃は一樹の言葉に感激し、一樹に好意を抱き始めたが、他方、瞳はその言葉の奥の意味を瞬時に理解できていた。「あんたはどうするの?永璃みならって告白する決心ついた?叶夢に」。瞳は奇跡の起こる可能性を意外にも本気で信じているのだろうと思う。しかし一樹は云った。「俺は、もう決めてる。一生いわないって。あいつと親友じゃなくなるのだけは嫌だからさ。一生あいつの傍にいたいし」。とても切ないが、正直な気持ちだろう。伝説のドラマ「同窓会」のような激しさこそないが、リアリティに富んだ台詞に満ちている。