学校じゃ教えられない!第三話

日本テレビ系。火曜ドラマ「学校じゃ教えられない!」。
脚本:遊川和彦。音楽:福島祐子&高見優。プロデューサー:大平太&桑原丈弥&井上竜太(ホリプロ)&太田雅晴(5年D組)。制作協力:ホリプロ5年D組。演出:木内健人。三限目。
西川叶夢(森崎ウィン)と横山永璃(仲里依紗)との関係が実に絶妙で、見ていて最高に楽しい。色んな女子に夢中になってしまう叶夢と、色んな男子に夢中になってしまう永璃は、結局は互いの浮気を邪魔し合っては、二人で組んでしまっていた。威勢のよい個性派の男女が競い合うようにドラマを盛り上げていて、名コンビと云うに相応しくなってきた。
この叶夢&永璃コンビに勝るとも劣らないのは、無論、水木一樹(中村蒼)と見城瞳(朝倉あき)の二人。賑やかな叶夢&永璃に比べると一樹&瞳は大人しくて真面目だが、この二人組が名コンビであるのは、一樹の「誰にも云えないマサカ」を両名が共有していて、しかも瞳がその秘密についても、一樹その人に対しても、好意的であるからに他ならない。
一樹の秘密の片想いのことを瞳が時折からかうのは、それによって一樹の焦る姿を見るのが楽しい!という多少サディスティクな感覚が瞳にあるからだろうが、瞳にとってもっと重要なのは、一樹の秘密を知るのが己のみであると確認することを通して、それが二人だけの秘密でもあることを確認することにあるのではないだろうか。
一樹が夢の中で大勢の女子たちに攻められ、或いは迫られて悲鳴を上げるのは既に毎回の恒例と化しているが、そういう「悪夢」の場は、今週の第三話では、朝の通学の途上、必ずしも満員ではない電車の座席に座したまま、居眠りをしていたときに現れた。その中で、不覚にも女性専用車両に迷い込んでしまった一樹に対し、電車内の女性たちが口々に罵声を浴びせるのだが、「女を性欲の捌け口にしか思ってないんだから、男なんて」という痛烈な非難の言には、一樹も弱るほかないだろう。なぜなら彼の性欲の対象は女ではないから。女になんか性欲を抱かない男子にとって、女からその種の疑いの眼差しを向けられ非難されること程に理不尽な話はない。
どこまでも普通の男子である彼は、唯一、性欲に関することでは男子の仲間たちの輪に入り切れない(そして彼の年齢の男子にとっては性欲のこと以上に重要な話題は殆どないとさえ云える)が、女子たちの輪に入ることはもっと難しい。他の男子とは少しだけ違うものの、女子では全然なく、男子と女子の中間にあるわけでも全くない。彼の微妙な立場がそこにある。このような一樹の感情を正確に理解できる人はどの位いるのだろうか。
ともかくも電車の中で居眠りをして見た悪夢から醒めた一樹は、隣の席に何時の間にか瞳が座していたことに気付いた。ここで瞳は云ったのだ。「寝言いってたよ。叶夢、愛しているよ!って」。もちろん嘘で、少々意地悪だが、愛がこめられていると感じさせる。このような愛のある意地悪の成立する前提として、一樹と叶夢の間の関係が魅力的であることがある。
叶夢の元気で陽気で能天気な言動の全ては、一樹を魅了しつつ悩ませる。その辺のところが劇中には度々効果的に描かれているが、今宵の第三話で特に面白かったのは、やはり、一樹と瞳の関係について叶夢が訊ねた場面だろう。「なあ、カズ、瞳ちゃんとはどうなってるわけ?」「だから、云ったろ、あいつとはそんなんじゃないって」「じゃあ、他に好きな奴でもいるの?」「え?」「やっぱ、いるんだ?ねえ教えてよ、ねえ、誰?」という遣り取りにおける叶夢の残酷なまでの愛らしさは、魔性という語を連想させる。
なお、今回の本題は、鈴村レイ(加藤みづき)の「誰にも云えない」苦悩に成田静也(前田公輝)がどう付き合ってゆくのか?ということにあった。何かと男子生徒を目の敵にする校長代理の影山盟子(伊藤蘭)が成田を悪役に仕立て上げようとし、相田舞(深田恭子)が何とか擁護しようとする中、何時も何を考えているのか判らない校長の氷室賢作(谷原章介)が、成田の無実について、彼が童貞に他ならないことを理路整然と証明することで証明してみせるという場面が、なかなかの見所だったと思う。