渡る世間は鬼ばかり第二十話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:清弘誠。プロデューサー:石井ふく子。第九部第二十話。
ラーメン店「幸楽」を営んでいる小島家の、東京大学卒業を間近にした自慢の長男、小島眞(えなりかずき)と既に結婚を約した大井精機社長の令娘、大井貴子(清水由紀)が、そのラーメン店「幸楽」の仕事を手伝うべく訪れてきた。店を手伝うよう命じたのは、同店の女将、小島五月(泉ピン子)に他ならなかったが、その意図は、苦労を知らぬ社長の令娘に小島家の家業の厳しさを思い知らせ、延いては結婚を諦めさせたいというところにあった。しかるに意に反して大井貴子は、初めてのラーメン店の手伝いを見事にこなした。その働き振りは、他の従業員一同にも、客にも大変に好評だった。五月の思惑が外れ、期待とは正反対の結果に至った恰好だが、この現実が五月にとって真に屈辱的であるのは、「幸楽」における給仕業務一筋で何十年も生きてきた五月にとってさえ重労働と感じられる仕事を、これまでそのような仕事を経験したこともないはずの、何不自由なく裕福に生きている社長令娘が、あたかも何年間もそこで働いてきたかのように驚くべく軽々と成し遂げたことにこそありはしなかったかと想像されよう。