炎神戦隊ゴーオンジャー第二十八話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第二十八話「相棒グンペイ」。武上純希脚本。中澤祥次郎監督。
ゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)の「相棒」の話。面白いのは、元警察官という軍平の経歴に因み、東映の刑事ドラマの傑作「相棒」のパロディを一部やってみせたこと。警察官として働いていたときの軍平の相棒だった人物として登場したのは、警視庁特犯係の刑事、柏木左京(今井朋彦)。もちろん刑事ドラマ「相棒」の主人公、杉下右京(水谷豊)によく似ている。今井朋彦といえばNHK大河ドラマ風林火山」の小笠原長時役が傑作だった。
軍平は、かつて警察官として働いていたが、やがてゴーオンジャーに憧れ、今は炎神ガンパード(声:浜田賢二)を相棒にしてゴーオンブラックになっている。今でも時々「刑事」としての経験を語ることがあるとはいえ、警察に戻りたいと考えているわけではないと見受ける。それなのに彼が今回、左京刑事から「軍平君、もう一度、私の相棒になってもらえませんか?」と誘われて目を輝かせていたのは、かつての無二の相棒からの誘いだったことに加えて、実は彼自身が「刑事」を経験したことがなかったからでもあるだろうか。かつて左京と軍平は交番に勤務していたのだ。制服を着た巡査だった軍平は、左京とともに街を巡回していた際、ガイアーク、そしてゴーオンジャーに遭遇し、やがて警察官を辞して、目出度くゴーオンブラックとなった。左京が警視庁本庁の刑事を拝命したのはその後のことだった。軍平もゴーオンジャーに憧れる前までは刑事に憧れていたに相違ない。その夢は叶えられたことがない。今や刑事となった左京が、たとえ一時の、臨時のことにせよ、刑事としての活躍の場を与えてくれるとすれば、軍平が目を輝かせるのも当然だったろう。
職業人としての使命感を抱いて専門性に基づいて動くのが軍平の姿勢の基礎にあり、その点で、現在の彼のもう一人の相棒とも云えるゴーオングリーン城範人(碓井将大D-BOYS])の快楽主義とは対照的であるし、また、職業的な責任感ではなく正義感そのものに燃える天才肌のゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)とは全く違っている。ガイアーク害水目の蛮機獣マンホールバンキ(声:伊藤健太郎)の今後の動きについて推測しようとしていた左京からの丁寧な質問に、走輔は「そんなの考えたって腹が減るだけだ!今度遭ったらマッハでやっつけるぜ!」と言い放った。これがゴーオンジャーの戦い方であり、それはゴーオンウイングスとも左京とも違う。軍平も、走輔の戦い方に常に賛成だったわけではない。それでもなお軍平は今やゴーオンジャーの一員であり、左京も多分そのことを走輔のあの一言から充分に察し得ていたのではなかったろうか。その上で敢えて軍平を誘ったのは、やはり、かつての最高の相棒と今回一度だけでも、一緒に刑事として働いてみたかったからではないだろうか。
刑事ドラマ風の今朝の話の中で傑作だった場面の一つは、ゴーオンジャー&ゴーオンウイングスの変装だろう。捜査の過程で彼等が一般人になり済ましてオトリとなったのだが、なかなか素晴らしかった。走輔とゴーオンブルー香坂連(片岡信和)は老夫婦に扮したが、性別が普段とは逆と云うか、連が老紳士で走輔が老婦人だった。ゴーオンウイングスのゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)とゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)の兄妹は、それぞれ学ランとセイラー服を着て高校生男女に扮した。大翔は恥ずかしがっていたが、美羽は楽しそうだった。普段と違う恰好をして喜んでいたのはゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)も同じ。早輝と範人は所謂ギャルとギャル男に扮したが、銀色に近い金髪の範人は「恋空」の如し。まるで別人のようではあるが、余りにも似合っていた。
その他、手違いで警察に逮捕されたゴーオンジャー五人衆が、左京から謝罪の意を込めて刑事部屋でカツ丼を御馳走になったときの嬉しそうな様子とか、軍平の「元刑事」の嘘を暴くときの走輔と連と早輝と範人の取調べ口調とか、打倒された産業革命マンホールバンキの「マンホールのフタが丸いのはフタが穴に落ちないためでござんす。これホント」という豆知識とか、何時も通り面白い要素が満載だった。