学校じゃ教えられない!第八話

日本テレビ系。火曜ドラマ「学校じゃ教えられない!」。
脚本:遊川和彦。音楽:福島祐子&高見優。プロデューサー:大平太&桑原丈弥&井上竜太(ホリプロ)&太田雅晴(5年D組)。制作協力:ホリプロ5年D組。演出:日暮謙。八限目。
先週の七限目において物語が一つの頂点を迎えたあと、今週の八限目から物語は新たな段階に入ったと見るべきだろう。吾等テレヴィドラマ視聴者は一般に、約三ヶ月間にわたり放送されるテレヴィドラマ作品における物語の頂点をその最終回に待望してしまいがちだが、そうした定型に則るか否かは作品により異なると見るべきだろう。この作品に関していえば、今週の八限目では相田舞(深田恭子)と影山盟子(伊藤蘭)の抱えてきた問題が明らかにされたが、それらが確と描かれた上で一応の解決をも見ることができるためには、その不可欠の前提として、社交ダンス部の十人の生徒たち、特に水木一樹(中村蒼)と見城瞳(朝倉あき)の関係が一応の決着を見ておく必要があったはずだ。だから先週の七限目において物語は最高に感動的な一つの結末を迎えた上で、今週の話へ続かなければならなかったのだ。
もっとも、今週の話で改めて確認されたことは、瞳の抱える問題が実は未解決だったことだ。
瞳の抱える問題の一つは、一樹の恋に関する問題に他ならなかった。一樹は西川叶夢(森崎ウィン)に対する成就の見込みのない片想いをどのように精算するのか?という問題。このことが瞳にとって重要であるのは、瞳にとっては一樹こそが成就の見込みのない片想いの相手だったからで、ゆえにこの問題は瞳にとっては直ちに、瞳は一樹に対する片想いをどのように精算するのか?という問題へ連動せざるを得なかったのだ。そして面白いことに、解決策においても瞳と一樹は連動していた。一樹は叶夢に愛を告白した上で、今後とも最高の「親友」として生きてゆくことを誓い合った。そして瞳も、一樹への愛を「ちゃんと言葉にして伝えて」、今後は互いに最高の「相棒」として支え合うことを誓った。そうなのだ。一樹は瞳を「相棒」と呼んだのだ。
だが、瞳の抱える問題はもう一つあった。叶夢に対する一樹の想い、一樹に対する瞳の想いと同じように、瞳に対しては真行寺夏芽(三浦葵)の想いがあったのだ。この解決は難しい。とても解決しようもなさそうに思える。実際、瞳への想いをどうしても断ち切れないでいる真行寺は、可愛さ余っての憎しみとも云うべきか、瞳が漸く見出した居場所である社交ダンス部を破壊するため、同部顧問の教諭である相田舞を事実無根の醜聞によって懲戒解雇へ追い込もうとした。
相田舞を救うため、社交ダンス部の十人が立ち上がった。最も頼りになるのはもちろん瞳と一樹だが、十人で行動を起こすためには叶夢と横山永璃(仲里依紗)の元気が必要だし、何よりも皆がそれぞれの思いを明確にしてそれぞれ意を決することが必要だった。その意味において十人中で最も内気で無口な吉澤可奈(柳生みゆ)が先頭に立って行動したのは、彼等十人がこれまでの幾つもの事件の中で、互いのそれぞれの問題をともに解決してきて成長して、その上で結束を固めてきたことをよく物語っていると云える。
だが、注意すべきは、彼等十人が「舞ちゃん」の救出のために立ち上がるよりも前に、既に実は影山先生が助け舟を出そうと考えていたのではないかと想像できることだ。そもそも相田舞の醜聞に関する保護者への説明会が開かれることになった時点では既に相田舞は、校長の氷室賢作(谷原章介)の裁定により懲戒解雇を宣告され、学校へ出てくること自体を禁じられていたはずだ。それなのに影山先生は、無断で放課後の学校に姿を現していた相田舞の姿を見出すや、この元教諭に対し、翌日開催予定の保護者への説明会に出席して自らの思うところを述べよ!と命じたのだ。
もっとも、果たしてどのように助け舟を出すか?について、影山には特によい考えもなかったのかもしれない。一か八かの賭けだったかもしれない。その意味では、生徒たち十人それぞれの「舞ちゃん」への感謝の言葉は、相田舞を鼓舞した以上にむしろ影山への助け舟になったとも考えられるのだ。