炎神戦隊ゴーオンジャーGP34

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第三十四話「悪魔ナオンナ」。武上純希脚本。諸田敏監督。
ゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)の姉、早苗(英玲奈)が登場。郷里の鹿児島から突然の上京をしてきたのは、多額の借金を抱えてしまって追われる身となり、居場所を失ったから。妹から金を巻き上げる心算だったようだが、結局、妹だけではなくゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)をも巧みに騙して、ゴーオンジャーの移動手段であると同時に居住空間でもあるキャンピングカー「ギンジロー号」を盗んで中古車販売店に売り払い、それで大金を得て鹿児島へ帰り去った。恐ろしい女だ。
妹の早輝は幼時からこの姉に苛められ続けてきて、この女の本性が「悪魔」のようであることを知っていたはずなのに、結局は姉が軍平を騙すのに加担させられてしまっていたわけなのだ。早苗の悪魔性の凄まじさ、徹底性を物語ると同時に、早輝にも(悪魔のような女を軍平に押し付けてしまおう!と考え付いてしまう程度には)少々の悪魔性がないわけでもないことを物語ってもいるだろうか。早輝と早苗の関係は、今年の夏に放送された日本テレビ水曜ドラマ「正義の味方」における中田容子(志田未来)と良川槇子(山田優)の関係に近いが、槙子の働く悪事が結果としては善に転じて人々に幸福を与えるのに対し、ゴーオンイエローという正真正銘「正義の味方」として働いている早輝の姉は正真正銘の悪女であるのが凄い。
この悪魔のような女、早苗の得意技は男子たちを魅了して金や物を貢がせることにあるようだ。女の色香と甘えの通用する甘い男には色香を発して甘えかかり、甘えの通用しない厳しい男の前では清純な女を演じてみせて、何れにせよ結局は完全に虜にしてみせる。軍平は後者だったが、他は、ゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)も含めて、揃いも揃って前者だった。ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)とゴーオンブルー香坂連(片岡信和)とゴーオングリーン城範人(碓井将大D-BOYS])はそれぞれ「そうちん」「れんきゅん」「はんてぃ」と呼ばれて甘えられ、軍平も最終的には「ぐんぴい」と呼ばれる始末。早苗の「魔性の女」としての技を考えるにあたり注目に値するのは、連と範人がそれぞれ手製の玉子料理とクレープを御馳走して早苗に気に入られようとした間、料理も何もできない走輔が一人その輪から外れていったのを見逃すことなく、むしろ走輔に近寄り語りかけ機嫌を取って贈物をせがんだところだろう。四人の男子の中で最も単純で騙され易いのは走輔だと見抜いた上での行動だったに相違ないが、同時に、あらゆる男に満遍なく気を配ることで己の魅力を完全無欠に見せる意図もあったろうと推察されよう。
今回の蛮機獣は害気目のヒーターバンキ(声:伊丸岡篤)。かなり強かった。この蛮機獣の活動によって街の気温は五十度まで上がっていたが、街にはパニック一つ起きる気配もなく、ヘルガイユ宮殿からその様子を見ていた害水大臣ケガレシア(及川奈央)は「最近の異常気象に、慣れっこになっているのでおじゃろうか?」と分析した。なるほど。しかし五十度もの気温にも動じないとは流石に凄過ぎる。
大翔が美容店で髪型を整えてドライヤーをかけてもらっていたとき、そのドライヤーが実はヒーターバンキだったのが異様に面白かった。兄に付き添って店に来て寛いでいたゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)も、どうして気付かなかったのだろうか。そこも面白い。