ギラギラ第二話

テレビ朝日系。ドラマ「ギラギラ」。
原作:滝直毅&土田世紀。脚本:荒井修子。音楽:住友紀人。主題歌:GIRL NEXT DOOR「情熱の代償」。制作:ABC&テレビ朝日ホリプロ。演出:高橋伸之。第二話。
東京六本木のホストクラブ「Rink」に迫る危機。歌舞伎町ホスト業界の首領と呼ばれる新宿「ATLAS」会長の堂島文治(平泉成)が新宿に続き六本木をも制覇することを目論み、先ずは「Rink」を陥落させるべく、拠点として「Rink」のあるビルの一階に「ATLAS」の六本木店を開設。しかもその長として、三年前まで「Rink」のNo.1ホストだった影士(阿部力)を配置した。
影士は十年前「Rink」においてNo.1ホストだった七瀬公平(佐々木蔵之介)の弟分だった。彼は兄貴分である公平のホスト哲学と手法を学んでNo.1にもなり、「ATLAS」にも引き抜かれる程の名声を博したのだろう。彼は公平の真の力量を知っていて、ゆえに恐らくは最強のライヴァルとして今なお恐れてもいて、ゆえに六本木「ATLAS」の副社長として迎え入れることで「Rink」の弱体化を図ろうともしていた。
こうした危機的な状況の中、六本木「Rink」のNo.1ホストのイーグル五十嵐隼士)は引退を宣言した。自身の後任の「本部長」には、No.2のアキラ(桜木涼介)でもなければNo.3の裕樹(崎本大海)でもなく、敢えて「最後の我侭」として、最下級の「新人ホスト」の「おっさん」の公平を指名した。空前の危機の中だからこそ「Rink」は変わらなければならないと考えたからだった。だが、一体どのように変わるべきであると云うのか。多分、客を食い物にする店から、客を真に癒し得る店に。イーグルはそのことを、ホストになる前の、ボクサーとしてNo.1を目指して、やがて失明の危機に陥って泣く泣く引退を決意しなければならなくなった時代から、互いに支え合ってきた恋人の小夜(原幹恵)の経済破綻をめぐる一件によって思い至った。公平の支援を受けて彼は小夜を守ることができたのだ。ホスト業からの引退を決意したのも、小夜と二人で生きてゆくために他ならなかった。
公平とイーグルが小夜を風俗営業店の淫らな面接の場から無事救出して、そしてイーグルが小夜に結婚を申し込んでホスト業からの引退を宣言するまでの目まぐるしいまでの流れは、極めて興奮度の高い展開だった。風俗営業店内の暴力沙汰は、結局、「Rink」オーナーの園部有希(真矢みき)が夜の街の掟に従い「筋を通した」ことで事無きを得た。
園部有希は十年前の戦友である公平に対して今は何時でも冷たい態度を貫こうとしているが、公平の掲げるホスト哲学は実は元来、他ならぬ園部有希の思想であり、公平の目指しているホストクラブの理想は、少なくとも十年前までは園部有希が信じていた理想に他ならなかった。あれから十年を経て時代は変わり、夜の街の雰囲気もホストクラブの存在の仕方も変わり果てた。有能なホストクラブ経営者である園部有希は、時代の変化に応じて経営方針の舵を取ってきたが、本来の自身の理想を捨てたわけではなかった。公平は今それを改めて鮮明に蘇らせてくれようとしている。公平の理想論を聞く度に園部有希はそれを冷たく却下してみせるが、内面から湧き上がる幸福感と歓喜はその表情を微妙に突き崩しそうになる。その辺を余りにも的確に表現してみせる真矢みきが素晴らしい。
公平は小夜に「何か悩み事があったら、僕でよければ話してくださいね」と申し出た。小夜は何も云おうとはしなかったが、気になった公平は小夜の経営する店を訪ね、既に倒産していたことを知った。このことをイーグルには云わないで欲しいと小夜に云われ、公平は悩んでいたが、その様子を見て取った弟分の翔児(三浦翔平)は「何か悩みがあんだったら、何でも云って。な?」と語りかけた。まだ一人の指名も取れていないような新人ホストではあるが、公平流のNo.1ホストの美学を継承し得るかもしれない眼力と、それを裏付ける心の優しさを持ち合わせている。それに、本部長に就任した公平のため手足となって動き回れるだけの頼もしさも見せ始めている。
さて、六本木「ATLAS」の影士は「Rink」ホストの半分を引き抜いた。引き抜きの話に応じて「Rink」とイーグルを裏切り「ATLAS」へ移籍したのは元No.2のアキラ、元No.3の裕樹のほか、健(ユージ)、蓮(松本寛也)、心(中村龍介)、春希(鹿内大嗣)、陸斗(西山宗佑)、那緒(下川真矢)。
残ったのは公平と翔児のほか、引き抜きの話を拒絶した元No.4(現在は暫定No.1)の冬真(夕輝壽太)をはじめ、レオ(松下幸司)、朔夜(CHIKARA)、涼(長町太郎)、葵(野澤剣人)、奏(有川良太)。「Rink」に残ることによってドラマ出演者としても生き残ったと云えるかもしれない。翔児には引き抜きの話も来なかったに違いないが、果たして残留組の彼等の内の何人に引き抜きの話が来ていたのか?というのは気になるところ。移籍を断った者の中には後悔しているのもいるかもしれないし、移籍の話が来なかった者の内で翔児以外の連中の中には傷付いているのもいるだろう。